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「伝える」ということの奥深さ

2015.3.22

1年前の私は「科学技術コミュニケーション」とはどういうものか知りませんでした。大学図書館でも研究支援や学習支援に力を入れなければ、と言われ始めてきた頃に、たまたまCoSTEPの受講生募集ポスターを見て、その言葉に出会いました。これは図書館職員である自分の仕事に、科学技術コミュニケーションが活かせるかもしれない、と思い本科の受講を決めました。しかし、自分が思っていた以上に複雑で、奥深いものでした。

本科の4つの実習の中から、私はライティング・編集実習を選択しました。取材を通じて様々な方から研究や科学に関するお話を伺い、それを記事にして不特定多数の読者に伝える、というプロセスを実践的に学びました。科学技術をわかりやすく伝えることの難しさ、そして自分自身の科学的知識の足りなさに四苦八苦する毎日でした。

1年間を通じて学んだことはたくさんありました。しかし、それと同時にわからないことや疑問もたくさん浮かび上がってきました。この表現は本当にわかりやすいのか、自分の言いたいことが本当に相手に伝わっているのか、と自問自答する場面が増えました。科学技術コミュニケーションの真髄に触れるには、まだまだ先が長いようです。CoSTEPで学んだことをどうやって自分の仕事に活かすのか、まだその明確な答えは出ていません。ですが、今まで学んできたことを胸に一歩ずつその答えに近づいていき、これからも社会での実践を通じて「伝える」ということを追求していきたいと思います。

最後に、CoSTEPの魅力を1つご紹介しましょう。CoSTEPの魅力は、何といっても多様な背景を持った受講生が集まってくること。学生から社会人、仕事をリタイアした人まで、様々な年代の人たちと一緒に学ぶことができたのは、他では得がたい体験でした。私は社会人として受講しましたが、様々な人と出会い、一つの企画をみんなで作り上げていくことが大変よい刺激になりました。仕事との両立は決して楽ではありませんが、社会人の方にこそCoSTEPの受講をお薦めします。

纐纈 直也

北海道大学附属図書館職員