サイエンス・カフェの「教育的効果」
山崎 健一
北海道大学大学院地球環境科学研究院 准教授
2015.3.18
私は、平成24年11月24日、紀伊國屋書店(札幌)で開催された、「第66回サイエンス・カフェ札幌」の講師として協力させていただきました。カフェには60名程度(北大教員5名、北大学部生10名、市民45名)の方々がお見えになられたと記憶しております。
講演のタイトルは、「ボク、生物“ロボット”〜科学が生み社会が育てる人工生命〜」というものでした。講演は、「2010年、アメリカの研究チームが、人工的に作ったDNAで自ら増殖する、世界初の人工生命を作ったこと」、「現代の科学が、実験室で生命を合成できるレベルにまで到達していること」などの紹介から始まりました。
次にDNAの「パーツ」を様々に組み合わせ、人間にとって役に立つ新たな生命体を生み出す研究を「合成生物学」といい、今や世界中の大学生チームによって、新たな合成生物のアイデアを競い合う、国際生物ロボットコンテストまで開かれていることも紹介されました。この取り組みは「生物版ロボコン」とも呼ばれています。合成生物学的手法は、生物が持つ無限の可能性を引き出せること、例えば「石油を生み出す人工細菌」や、「有害物質を見つけるバイオセンサー」、「二酸化炭素を吸収する微生物」など、様々な環境問題の解決に利用されうることも紹介されました。
講師をお引き受けするにあたって、こんな専門的な内容を分かり易く市民に説明することなんてできるのだろうかと、チョット躊躇していたのですが、CoSTEPの受講生の皆さんのご協力を得て、分かり易い講演に改造していただきました。受講生の皆さんのお役にたてればと思って参加したのですが、かえって「私にとっての教育的効果の方が大きかったのではないか」と、後になって気づかされました。