修了生の活躍に期待
この10年で世界は大きく変貌し、科学技術に携わるものもその変化と無縁ではいられません。CoSTEPが育ててこられた科学技術コミュニケーターは、日本の社会の様々な場所でユニークな活動を繰り広げられ、活躍しておられます。大学や研究機関もまた、科学の言葉を翻訳できる広報人材の重要性に徐々に眼を向け始めており、広報職の募集を見かけるとまずはCoSTEP修了生の皆さんの顔が思い浮かぶほど、私にとっても心強い存在となっています。
この10年は科学技術コミュニケーションにとってもその真価を問われるような重大な出来事が立て続けに起こりました。東日本大震災とそれに伴う津波被害や原発事故は、ひとり一人がそれぞれの立場で科学技術と社会との関わりをどのように受け止めるのかという重い課題を突き付けていますし、政権交代と事業仕分けに象徴されるように、科学研究の価値とそこに投入される税金とのバランスについての議論が専門家以外のチャンネルを通じても広く議論される時代になりつつあります。
20年前に世の中の情報の流れを変えたホームページは、この10年でブログやツイッター、Facebook、LINEなど、さらにその形を変えて、誰でもいつでも気軽にコミュニケーションができる便利で強力な道具へと発展してきました。小惑星探査機はやぶさの帰還がネットを中心に盛り上がったり、しんかい6500による深海底からの史上初の生中継には深夜にも関わらず2万人がアクセスするなど、科学技術の情報の流れにも変化の兆しが見られます。と同時に、原発事故に対する考え方を異にする人々の間で起きたコミュニケーションの分断や、科学技術が好きな人とそもそも全く興味を持たない人々とのコミュニケーションの断絶が、これからはますます顕著になっていくのではないかという危惧もあります。
社会の変化と多様性がますます激しくなる現代において、科学技術コミュニケーターの重要性はさらに増していく一方です。CoSTEPのますますのご発展と修了生の皆様のご活躍に期待しております。