CoSTEPのエートス
CoSTEPが産声をあげてから10周年。おめでとうございます。
私はあらゆる場面で、CoSTEP(および関係者の皆さま)に多大なる刺激を受けており、感謝の念に堪えません。
その中でも最も印象深いのは……東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を受け、中止となった2011年3月13日に予定されていたシンポジウムです。私は登壇者としてありがたくもご依頼いただいていたので、3.11の次の日で混乱が続く東京の交通網をかいくぐり、札幌へ赴きました。しかし、前日にシンポジウムの開催をとりやめる旨のご連絡を受けました。
このシンポジウムは、その年の修了者の成果発表をし、門出を祝う場だったので、主役の修了者の皆さまは複雑な想いだったでしょう。私と同じくシンポジウムの登壇者で、札幌入りしていた岡本真氏と話をし、「この『時』だからこそ、せっかく色々な人が集まっているこの機会を逃すのは惜しい」ということで、主催者の方々に「クローズドでもいいから、集まることができる人たちでディスカッションをする場を設けることはできないでしょうか」とお願いしました。無茶なお願いだったにも関わらず、CoSTEPの機動力のなせる技でしょうか。多くの方々が集まって下さり『今回の震災と科学技術コミュニケーションについて考えるディスカッション』を開くことができました。突然の災害で、日本の科学技術コミュニケーションそのものに問題が突きつけられていることを体感しつつも、多くの出席者は混乱の中にいたと思います。私もそのひとりでした。ただ、その場に駆けつけて下さった人たちと忌憚ないディスカッションができたことは、たいへん貴重な機会でした。
このCoSTEPのエートスを実感した者として、今後のご発展、そしてこれからも多数の科学技術コミュニケーションの担い手を多方面に送り出し、その方々が活躍されることを祈念します。