高等教育研究者との密接な連携を
小笠原 正明
北海道大学名誉教授、大学教育学会会長
2015.3.18
北大勤務の最後のころにCoSTEP開設の動きがあり、高等教育機能開発総合センター研究部(当時)の専任教員の多くがプログラムに参加することになりました。それで仕事が増えてセンターの先生は大変だったようですが、結果的には正しい方向だったと思います。CoSTEP開設への批判は、つきつめれば、科学技術の研究や教育の「ライン」で人が足りないのに、ラインでもロジスティックスでもない仕事に人は割けないというものでした。しかし、この10年間の社会環境の変化とCoSTEPの目覚ましい活躍により、科学コミュニケーションの実践は、科学技術のラインそのものであることが認識されるようになりました。
専門分化した科学技術は容易に非人間化して、化け物のようなものになりがちです。科学コミュニケーションは、人間と科学技術を密接不可分のものとして扱いますので、科学技術の「人間化」に貢献します。研究の現場とは一見隔たっているように見えますが、実は科学技術に携わる者のスタンスに重大な影響を与えます。これは教育とも共通する性格ですので、今後とも、高等教育研究者との密接な連携を保ちながら次の展開を目指すことを期待します。