ワークショップの設定は2050年。A1社が開発した人工知能「MIRAI」の未来予測が人間の生活に浸透した時代です。
今回、MIRAIは凶悪犯罪を起こすと予測された人を強制的に隔離する新法案「凶悪犯罪予防法」を提案しました。
皆さんは、この法案に賛成ですか?反対ですか?それとも、一部修正が必要でしょうか?5人1組のグループになってその賛否を討議してもらいました。
このワークショップのポイントは、自分の素直な見解を述べることが出来ないということ。配布された「人物カード」に書かれた設定になりきって発言をしなければならないのです。賛否が分かれるよう、それぞれの人の背景が設定されています。
(作成した人物カード)
皆さん、それぞれの役になりきって活発な討議を行ってくれました。私たちA1班のメンバーも、ファシリテーターとして皆さんが主体的に意見を発信してもらえるよう調整役となりました。
(人物カードを使って討議していきます)
討議結果は一部修正のグループが最も多く、修正案としては「まずは予測結果を本人に通達する」、「凶悪犯罪を起こしそうな時期だけ隔離する」などの意見が出ました。中には、「隔離は竜宮城のような場所で」というユニークな意見も。
終了後は、お互いのカードを見せ合って盛り上がりました。
(会場全体でグループの討議の内容をシェアする様子)
イベントの結果
(アンケートの結果)
参加者は、「科学技術に興味のある大人」が多いという結果でした。一方、参加による意識の変化はあまり見られませんでした。AIについての説明やAI・科学技術がテーマであるということを伝えられる工夫が不足していたためと考えられます。
一方、テーマや人物カードを使用するなどの工夫は好評でした。また、正義や人権、考えの多様性など、思いがけないところに興味を持ってもらうことが出来ました。
イベントを実施して学んだこと、発見したこと
①チームでイベントを創り上げることの大変さと楽しさ
メンバーの専門や興味のある分野が様々な中で、意見を出しまとめていくのに非常に時間がかかりました。しかし、全員が納得いくまで議論を行うことで良いものになっていく実感があり、大変さも楽しさへと変わりました。
イベントを創る上では、段取りと時間管理をしっかりと行うこと、意見や決定事項を可視化すること、煮詰まったら目的に立ち返ることが重要であるということも実感しました。
②ワークショップは常に参加者目線で
参加者にとって、何をすれば良いか分かりやすい構成・指示になっているか、起こりうるハプニングも想定しながら準備を行うことが大切だと学びました。そして、十分なリハーサル時間を取って全体の流れをメンバーで共有すると共に、第三者に意見をもらうことも必須だと学びました。本番は、状況に応じて一人ひとりの臨機応変な対応が大切でした。
メンバーの役割
(左から、須田、小林、福井、小川、竹中、そして奥本先生)
まとめ
今回のイベントは、「考えることの大切さを伝えたい」という思いから、参加者全員が当事者となって考えることができる形式を考えました。専門家ありきのサイエンスイベントではなくこのような形式に挑戦できたのも、個性豊かなメンバーが揃っていたためです。この経験と自信、そしてCoSTEPの仲間たちとの繋がりを大切にし、今後も科学技術コミュニケーターとしての活動を続けていきたいです。