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110サイエンスカフェ札幌「動物のおもしろい『生き方』探してみた進路に迷うサケからシャイリスまで!?〜」を開催しました

2019.11.1

鈴木 朝子(2019年度 本科/学生)

2019年10月20日(日)、小泉 逸郎さん(北海道大学 大学院地球環境科学研究院 准教授)をゲストにお招きし、第110回サイエンス・カフェ札幌「動物のおもしろい『生き方』探してみた〜進路に迷うサケからシャイなリスまで!?〜」を開催しました。秋晴れに恵まれた今回のカフェでは120名を超える方にお越しいただき、野生動物の様々な「生き方」を通して生態学のおもしろさに触れてもらうことができました。

森のラジオ放送局へようこそ

今回のカフェは、森の中でのラジオの公開収録、来場者はその観客で、小泉さんはこの日の収録のゲストという設定のもとで行われました。カフェの企画・運営は「対話の場の創造実習」受講生(鈴木朝子、鈴木伶音、坪川、樋口、渡辺)を中心に進めてきました。ヒグマの毛皮が目を引く受付から会場へと足を踏み入れると、席をぐるりと囲むように動物の展示があります。司会の挨拶が終わるとAD役の坪川が元気良く会場を盛り上げ、パーソナリティ役の鈴木朝子と小泉さんが入場。いざ番組の収録がスタート。


(本当にたくさんの方にお越しいただきました)

お悩み相談室〜「?(フシギ)」と「!(ハッケン)」に触れる〜

第一部は「科学者お悩み相談室」のコーナー。リスナーから寄せられたお悩みに対して、動物生態学者の小泉さんに独自の目線でコメントしていただくという内容でした。様々な動物(小泉さん本人含む)の「生き方」を紹介しながら、動物や生態学の魅力に迫ります。そして、そこから私たちが普段抱くような悩みの解決への糸口を探りました。また、動物の生態に関するクイズを盛り込むことで、来場者の方々と共に動物たちの「生き方」を考え、今回のカフェのキーワードである「?(フシギ)」と「!(ハッケン)」に触れる時間をつくることができたように思います。

(たくさんの来場者とのやりとりがありました)

森の観察会〜「?」と「!」を見つける〜

第二部は「森の観察会」と称し、会場の展示を来場者の皆さんに楽しんでいただきました。展示の中には生きているヤツメウナギやニホンザリガニもいます。普段目にする機会が少ない動物を目の前にして、時には実際に触ってみて、五感を通じて各々が自分だけの「?」や「!」と向き合います。それらを付箋に書き留めてボードに貼っていくという工夫を盛り込みました。そのほか、小泉さんのメインの研究対象であるサケ科の展示、頭骨や毛皮の存在感が抜群のヒグマ展示のブースにも大勢の人が集まり、展示解説に耳を傾けたり、展示品を手にとったりして楽しんでいました。

(不思議な生き物ヤツメウナギは子ども達にも大人気)

小泉さん自身のブースも設置しました。そこには、本人の等身大パネルが!フィールド調査の際に使う道具なども展示され、見る人たちの目を引いていました。小泉さんも来場者に混じって一緒に展示ブースを回り、来場者からの直接の質問に応じるなど、科学者と市民の交流の場となったのではないかと思います。

(ヒグマブースでは、実際に手にとってその質感や匂いを確かめる人の姿も)

皆で「?」と「!」を共有しよう

第三部は、各展示ブースのボードに付箋で貼ってもらった皆の「?」や「!」を会場全体で共有するコーナー。小泉さんに、気になる内容の「?」や「!」を選んでいただき、説明やコメントをいただきました。

(ヒグマの頭骨を用いたりしながら、様々な来場者の「?」や「!」に答えていきます)

ここでも流石の小泉さん。実は、第三部で紹介された生態学に関するスライドの一部は事前に使う予定のなかったもので、その場でご準備いただきました。ブースに貼ってある皆の「?」や「!」の内容を受け、より内容を深められるよう臨機応変に答えていただきました。パーソナリティー役だった私も初めて触れる内容だったので、思わず聞き入ってしまいました……。

(答えきれないくらいの「?」や「!」が)

好奇心は誰もが持ち得る財産、人生を楽しむための鍵

「おもしろい」と感じる気持ちを大事に、魚類から哺乳類まで様々な動物の生態を研究する小泉さん。生物は想像を超える「生き方」で私たちを魅了し、生態学を通してヒトとは何なのか?を問うことができると語ります。そして、小泉さんが研究者人生の中で常に大事にしてきたものが「好奇心」。全ての人が生まれながらに持っている財産。如何にうまく保ち続けられるかが人生を楽しむ鍵だそうです。

(小泉さんの研究の原動力は、誰もが持っている「好奇心」)

今回のカフェの中では、「好奇心」を「?」と「!」という形で表現しました。そして、クイズや展示を通して来場者の皆さんが「?」や「!」を感じ、自分の中からそれらを引き出してもらえたのではと思います。しかし、そうした「好奇心のタネ」は実は私たちの身の回りに溢れています。忙しい日常の中でもその感性を大切にすることができれば、人生をより楽しむことができるかもしれません。

(サケ科のボード。皆の「?」や「!」が見える形に)

(たくさんの方にお手伝いいただきました)

小泉さん、お越しいただいた皆さん、ありがとうございました!

対話の場の創造実習:鈴木 朝子、鈴木 伶音、坪川 耀一、樋口 栄子、渡邉 洋子