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本当は知らない「知る」

2020.3.30

私がCoSTEPを初めて知ったのは、大学院の入学式でのガイダンスです。学部4年目を怠惰に過ごしてしまった事を後悔していた私は、「大学院では何か自分を変えられるような事をしたい!」と思いCoSTEPへの応募を決めました。「札幌可視化プロジェクト」実習を選んだのは、絵を描くのが好きだからアートについて学びたい、という非常に簡単な理由からでした。

「札幌可視化プロジェクト」実習(長いので、以下可視化実習とします)の活動は、アートと地域という側面から科学技術コミュニケーションに取り組むというものです。2019年度は7月に札幌で開催されたテオ・ヤンセン展でのワークショップ、9月のあいちトリエンナーレを含めた可視化アートツアー、1月にはそれまでの学びを踏まえ、江別蔦屋書店でイベント「ヒト、トナリ」を開催しました。

可視化実習の活動では、多くのアート作品に出合い、自分で物事を考えて調べ、班の仲間との話し合いを何度も行いました。私は活動を通して、自分が今まで知っている、分かっていると思っていた事に本当はもっと奥深さがあるという事を学びました。

あいちトリエンナーレでの展示を巡り起きた問題や作品を目の当たりにし、自分がこれまで想像していたよりも、アートがずっと深く社会に食い込んで影響を与えるものだと知りました。

ヒト、トナリイベントは「自分や他者の価値観を知る」というコンセプトで、ワークショップを作るために何度も可視化実習の皆と話し合いました。その中でも、メンバーが意見を発言する時や、自分が様々な場面でぼんやりと感じる感情の根本には、見えないけれどそれぞれの価値観がある、という事に気づきました。

知っているつもりで終わらせず本当に「知る」、それから「理解する」ためには、知ろうとする努力が必要です。それにはまず「知らないという事を知る」事、更にそれを自覚するには、とにかく自分から行動して色々な物事や人に触れるしかありません。これからも「知らない」を知り、分かったと言えるように自分から動いて活動していきたいと思います。

坂尾 南帆(本科「札幌可視化プロジェクト」実習)
北海道大学 大学院情報科学研究科 情報メディア環境学研究室修士1年