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伝える、伝わる、そのためには

2020.3.30

“伝える”ということ

研究が本格的に始まり、その成果発表の機会が増えるにつれ、自分の研究の奥深さや魅力を伝えきれないもどかしさを感じる機会も増えていきました。そんな時にCoSTEPの赤いチラシと出会い、プレゼンテーションの機会を増やし、その方法を知ることが出来ればという思いで、CoSTEPの受講を始めました。

実際に講義が始まり、一番印象に残ったのは「伝える方法」ではなく「伝える相手」でした。CoSTEP内や講師の方々だけでも様々な考えや立場の人がいる中で、科学技術に対する問題の多くが立場や思いのすれ違いによるものであることを学びました。私が伝える相手は決して私と同じ境遇ではないことを意識し、伝える相手の立場、境遇、 今までの経験などをどれだけ想像し、どれだけ寄り添えるかの大切さを実感しました。

その後、授業や演習の中でプレゼンテーションの機会を増やすことができたと同時に、様々なヒトのプレゼンテーションに触れる機会も増え、様々な表現手法を学び、実践することができました。また、アドビ システムズ 株式会社(以下、アドビ)での特別実習にも参加させていただき、自分が伝えるだけでなく、皆が思いのままに伝えあえる場を作るということについても考える機会を得ました。

(アドビでの特別実習。左から村井貴先生(メディアデザイン実習),米田夏輝さん(映像デザイン実習),中島(メディアデザイン実習))

伝わるための工夫

メディアデザイン実習としてのメインイベントとして、NoMapsで子どもたちに向けた人工衛星に関するサイエンスワークショップ「宇宙はスペースが足りない ~人工衛星をおびやかすデブリ~」を企画し、出展しました。タイトルやストーリー、コンテンツ一つ一つを考えるにあたり、伝える方法を考える実践をすることができました。

特に、私は電波と映像を用いた宣伝方法として、メディアアートを担当することになりました。情報科学研究科への進学を決めた時から、デジタルを用いた音や感覚表現に興味を持っており、その実行の良い機会だと思い手を上げましたが、最初から上手くはいきませんでした。

デジタルで表現することに固執し、映像だけで表現した電波は、「電波の波形そのまま」等厳しい意見をいただきました。丁度その時期に、通常の大学授業でタンジブルビットの生みの親として紹介されていた石井裕先生とお会いできたり、アーティストの真鍋大渡さんのリハーサル見学をさせていただける等、様々な機会を得られたと同時に村井貴先生からの助言もあり、デジタルの限界と、伝えるヒトの今までの経験に寄り添い、アナログと融合させることの強さと有効性を学びました。ほかのメディアデザイン実習のメンバーの活躍もあり、本番は成功することができ、この体験は私の将来の方向性すらも変える体験となりました。


北海道大学 大学院情報科学院 情報科学専攻 生体情報工学コース 修士1年