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選科A活動報告「サイエンス総選挙2020 〜もしも定額研究投資金が給付されたら〜」

2020.10.3

選科A 「サイエンス総選挙管理委員会」

佐野 仁香、小林 知恵、三浦 凛、木内 裕祐、水野 幸子

「科学技術を自分ごととして考えてもらいたい」

このような思いから、私たちサイエンス総選挙管理委員会はサイエンスイベントを企画しました。

計算速度世界一のスーパーコンピューター「富嶽」、はやぶさ2による小惑星リュウグウのサンプル採取成功など、輝かしい科学的成果を報じるニュースは私たちの心を躍らせるもの。

だけど私たちにはその成果しか知らされず、研究開発の着手や遂行に関わる意思決定に参加することはほとんどありません。

そこで「どこか遠く感じられる科学技術に興味を持ってもらい、そのあり方を考えたり、活動を応援するアクションにつなげる」、という目的を設定してサイエンスイベントを実施しました。

イベントポスター・水野 幸子 作

1.イベント内容

イベントの舞台は、Z歴2020年。サイエンス総選挙2020が開催され、国民(参加者)は二つの候補プロジェクトのプレゼンテーションを視聴した上で、手元の定額研究投資金をどちらに投じるかを選びます。

今回立候補したのは、未来の健康を考える党の「ナノテクノロジー」、人と地球にやさしく党の「核融合発電」。皆さんはどちらに定額研究投資金を投じますか?その理由は?

未来の健康を考える党の政見放送
人と地球にやさしく党の政見放送

参加者の皆さんにはWeb会議アプリケーション「Zoom」の投票機能やチャットを通じて意見表明をしてもらいました。さらにイベントの終盤では、現実の世界で科学技術を応援したり意思決定に参加するためにできるアクションとして、クラウドファンディングやパブリックコメントを紹介しました。

2.当日の流れ

(1)司会のアイスブレイキングにはじまり、政見放送へ。参加者の反応をチャット欄で募りながら、定額研究投資金の投資先を投票してもらいました。

参考: チャット欄に投稿された意見

「確かに健康寿命は伸ばしたい」
「核融合と聞くと怖い言葉だけど、イメージと違った」
「もう少し明確な運用プランを知りたい」、「どちらも選べないなあ」
「研究内容が難しい」

(2)投票結果

「未来の健康を考える党」:28%
「人に地球にやさしく党」:28%
「どちらか選べない」  :45%

その後、二名の参加者の方に投票理由を述べていただき、科学社会学者役の小林から市民が科学に関する意思決定に参加する意味と、選挙という方式が抱える問題点について補足説明をしました。

アンケート結果から参加者の意見を募っていく

(3)最後に自分達が科学技術の研究の後押しとなる方法としてクラウドファンディング(アカデミスト)、パブリックコメントを紹介しました。

参考: チャット欄

「アカデミスト初めて聞いた」
「パブリックコメントってどれくらい浸透している?」
「数十年後の様子を想定してみては」、「もう少し身近な研究だったら」

・当日の役割

3.イベントの結果

事前アンケートと事後アンケートを行った結果、目的とする科学技術の関心についてわずかながら上昇したことが明らかになりました。

また事後アンケート自由記述では、未来の健康を考える党に投票した人は将来生活がどう変わるのかという観点から選択を行い、人に地球にやさしく党に投票した人は社会の問題をどう変えるかということに重きをおいていたことがわかりました。

しかしどちらか選べなかった人の意見では、「決める」ということへの難しさが多く記述されており、研究内容の説明を平易にし、参加者の判断材料を適切に提供する必要があったと考えられます。

4.イベントから学んだこと

イベント当日、またその準備を通して、以下の4点を学びました。

  • チーム内のコミュニケーションとマネジメント

最初から最後までオンラインでの実施となった今回のイベント。オンラインミーティングに慣れていないこともあり、チームメンバーそれぞれの性格が見えてくるまで時間がかかりました。さらに、各人の仕事や生活との調整もあるため、遠慮していては進みません。マネジメントの基本ですが、早期にチームメンバーと相互理解を得て、役割分担や作業の期限を決め、それぞれが責任を持って期日までに宿題をこなす、不安な点は遠慮なく共有して意思疎通を図るというということが、イベント実現に不可欠だったと感じました。

  • 目的の明確化

イベントを実現させるまで、「私たちがこのイベントを通して参加者に伝えたいことは何か?」と、イベントの目的を何度も問い直しました。どんな内容のイベントにする?進行方法は?など様々な論点について議論を重ねるなかで、「どこか遠くに感じられる科学技術に興味を持ってもらい、そのあり方を考えたり、活動を応援するアクションにつなげたい」という目的からブレていないかどうか、を意識しながらチームとして意思決定をしていきました。

とくに20分間のコンテンツを考える際には、目的が明確化されていることで、シナリオの細部にどんな意図を込めるべきかも明らかになり、ひとつひとつの意味付けに繋がりました。

  • 想像力の大切さ

「イベントに参加して嫌な気持ちになる人がいないように」、これは私たちのチームでテーマ決めの時から常に留意していた点です。新型コロナウイルス流行下ということもあり、テーマは適切か?参加者が楽しめる内容か?などを話し合ってみると、参加者の気持ちを想像することの大切さを強く感じました。

また何度もリハーサルやシミュレーションをしても、本番では予想外のことも起こります。投票結果が同数となったり、参加者から「難しく感じる」、「もっと○○だとよかった」などの意見も受けました。こういった参加者の多様な意見を想像したり、実際に寄せられた意見を踏まえてよりよいサイエンスコミュニケーションに繋げていくスキルの重要性を実感し、今後の学びを通じて身に着けていきたいと感じました。

  • オンラインの良さと難しさ

今回のイベントは、メンバーにとってもほぼ初めてのオンラインイベントでした。Zoomの操作をはじめ、動画編集、チャットの活用など、イベントの準備を通じてオンラインのスキルを身に着けることができ自信になりました。初めはオンライン開催に対してネガティブな意識もありましたが、時間をかけて内容を作り込むことができ、また遠方からも参加可能であることで参加者の幅が広がるというオンラインの良い面を感じることができました。

しかし、参加者と実際に会えないなかで会場の空気感をどのように作るか、参加者との双方向性をどう持つかなど難しさも感じ、「コミュニケーション」の方法を改めて考え、学ぶ機会となりました。また、オンラインでは公開されたデータが残ってしまうことや、参加者のプライバシーなどへの配慮が不可欠であることも、実際に自分たちがイベント開催することで学ぶことができました。

5.まとめ

今回はオンラインということで、念入りに打ち合わせをしたことでイベント開催の目的をしっかり考えることができたと思います。また、オンラインプログラムと対面で実施するプログラムの違いも感じることができました。しかし、参加者内で知識量に差があることを考慮しきれておらず、一部の参加者には難しいと思わせてしまった点など、課題も残りました。

今後も科学技術コミュニケーターとして個人個人がこの経験を活かして活動を企画・実施できるようになっていきたいと思います。

謝辞

今回のサイエンスカフェにおいて指導してくださった先生方、またお世話になりました皆様に感謝申し上げます。

Zoomでは50名以上、YouTubeでは30名以上の方に視聴していただきました。たくさんのご参加とご意見、ありがとうございました。

サイエンス総選挙管理委員会メンバー

本記事は、2020年8月30日(日)に実施した2020年 選科Aオンラインサイエンスイベント「これから/どこから」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、対面でのサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、企画から実施まですべてオンラインでの開催となりました。19人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。以下のリンクより、他の活動報告もぜひご覧ください。

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