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石村特任准教授が「人工知能学会2009年度研究会優秀賞」を受賞

2010.6.25

 CoSTEPの石村源生・特任准教授が今月、「『Web 上の情報表現の構造化・可視化ツール』の提案」という研究成果に対して、「人工知能学会2009年度研究会優秀賞」を受賞しました。

石村・特任准教授は、ウェブ上で様々な議論を効率的に生産し、他のユーザーと情報共有するのに役立つプラットフォームを作るために、ウェブ上の情報表現を構造化し可視化するツールを提案しました。

このツールでは、「カード」と「意味付きリンク」という2種類の情報単位が設定されています。ユーザーはカードに短い文章などの情報を入力し、カードどうしを目的-手段、原因-結果といった意味付きリンクによって結びつけていきます。複数のカードとリンクを順に組み合わせて議論を組み立てていくことができるので、思考の整理と表現に便利。他の閲覧者はウェブ上で、議論がどういう構造をしているのか視覚的に容易に理解できます。

 ここまでの機能は既存の概念表現ツールと類似のものですが、さらに、ウェブ上で複数のユーザーが情報を共有することで、集団で評価活動もできるのが興味深いところ。ユーザーが有益だと判断したカードやリンクに「投票」することができ、その結果によって個々のカードやリンクの評価の高低が計算されます。評価の低いものを非表示にしたり、特定のユーザーが高く評価しているものだけを選択したりして、おのおののユーザーや議論のコーディネーターなどが、有益なカードとリンクだけを表示することも可能です。

このように、「集合知によってカードとリンクを生成し、相互評価によってフィルタリングすることにより、議論を構造化し可視化できるだけでなく、目的に応じた有益な情報を選び取ることができ、それをさらなる議論の土台にすることができる」のがこのツールの特色です。

「ツールの開発は技術的にはそれほど難しくないでしょうが、プロモーションが重要です」という石村・特任准教授。いかに多くの人たちに使ってもらうかという意味でのマーケティングと、持続的に運用していくためのマネジメントが不可欠で、現在これらをトータルに実現するための方略を練っているそうです。

こうしたツールを提案したきっかけを聞いてみました。「科学技術コミュニケーターの人材育成に携わっていく上で、対面式教育はもちろん重要なのですが、関わることのできる人の数に限りがあります。この壁を越えるためには、より広範な学習機会を社会の中に自然な形で埋め込んでいくことが必要」と痛感し、ウェブサービスの活用に着目したとのこと。「ウェブ上での情報表現を複数のユーザーで構造化・可視化するこのツールは、論理的で建設的な議論を支援し、異なる主張や政策の比較、合意形成といったコミュニケーションを下支えするプラットフォームになりえると思っています」。石村・特任准教授の構想したツールが実現すれば、近い将来、科学技術コミュニケーションの分野で活用され、効果的に議論を積み重ねていくための強力な手法になることでしょう。