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科学ジャーナリズム現状と課題

2010.11.17
11月10日の講義は、CoSTEPの立ち上げにも深くかかわられた江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授の隈本邦彦氏から、主に医療報道を中心として、我が国における科学技術ジャーナリズムの現状と今後の課題について講義が行われた。新聞記事とそのニュースソースなどの資料が用意され、その記事の内容を検証するという演習にも似たスタイルで展開された。
世論調査からは、新聞・テレビなどの大手メディアの報道によって市民が科学技術の情報を得ている。その一方で、科学者たちは市民に対する自らの研究内容をシンポジウムや所属機関の一般公開で伝えたいと考えているとのことだ。テレビは1%の視聴率で130万人に情報を届けることができる。科学者はメディアをもっと有効に活用することでもっと科学情報を伝えられることを意識すべきで、メディアが伝える科学ニュースの内容も、よりレベルの高いものにすべきだ、と話された。
報道機関で科学ニュースがどのような過程を経て作られるかを説明していただき、発信されるニュースの質に関してどのような課題があるかをお話しいただいた。一つには、プレスリリースやその他の情報源を、十分な検証をすることなく報道してしまう例があるとのことだ。これらは、記者自身がもっと勉強していれば防ぐことができた事例や、プレスリリースの情報に加えて、自らの足で取材すれば防げた事例だ。これらの事例の記事について、ニュースソースとなったプレスリリースや論文をもとに、どこがどのように事実と違っているかを検証する演習も行われた。
私たちが学ぶCoSTEPで「現在の科学技術ジャーナリズムに対して貢献できること」を、隈本氏の私見としていくつか紹介され、その中に「基礎的な科学知識とジャーナリスティックなセンスを身につけた人材を世の中に送り込む」ことをあげておられた。また授業終了後にも、「現在の科学技術報道には、科学技術論文に不可欠な統計の知識を十分に理解した記者が少ないのではないだろうか」など、活発な議論が行われていました。
レポート: 児玉 耕太(本科生)