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本科、選科あわせ、65名が修了

2011.3.16

 3月13日に、2010年度の受講生80名のうち、65名(本科22名、選科43名)がCoSTEPを修了しました。

65名は、1年間にわたり、講義と演習、さらに多様な実践活動(実習)を通じて科学技術コミュニケーションを学んできました。今後は、2005〜2009年度のCoSTEP修了生314名はもちろん、それぞれの場で実践的な活動に関わっていらっしゃる方々とも協力しながら、科学技術コミュニケーターとして活躍していくことになります。

今年度の修了生65名の学びの成果については、3月13日(日)に「成果発表会」を開催して、多くの皆様にご覧いただく予定でしたが、このたびの東北関東大地震にともない中止しました。そこで、成果の一部(本科の実習と選科の演習)を、概要だけですが、この場でご報告いたします。

本科

広報メディア企画・制作

北海道大学広報誌「リテラポプリ」各号の特集記事の執筆と、特に高校生の読者を意識した特別号の企画から取材、執筆、撮影、誌面レイアウトの検討まで、広報メディアの制作に関わるプロセスを経験しました。毎回のミーティングでは「高校生が読みたい情報、私たちが伝えたい情報は何だろう」と考えながら、わかりやすい記事の執筆はもちろん、読みやすく的確に情報が伝わるデザインにも気を配りながら広報誌を仕上げました。

「科学館通信」企画・制作

読者の特性を具体的に想定した上で冊子の企画・編集・制作を行うスキルを見につけることを目的に、科学館通信を制作しました。

札幌市青少年科学館の協力を受け、科学に関心の低い人が比較的多いと思われるF1層(20〜34才までの女性)を読者と設定し、その人たちがどんな場面で冊子を手に取るか、どんな内容であれば関心を持ってもらえるのかなどを考えました。さらに受講生が科学コミュニケーターとして持っている問題意識や札幌市青少年科学館のリソースを反映するというさまざまな条件も考えたうえで、企画・制作を行いました。タイトルは、異なるもの、なじみのないものを結びつけるという願いを込める意味で『くろすかっぷりんぐ』としました。完成した冊子は、科学館はもちろん、カフェや美容院など、読者の日常生活の中で手にとってもらえるよう、配布場所も工夫しました。また、各地の科学館にも送付し、アンケート調査も行いました。

音声・映像メディア

鈴木章先生のノーベル化学賞受賞や、金星探査機あかつき、人獣共通感染症、サイエンスカフェなどをテーマに、iTunesで聴けるポッドキャスト(ラジオ)番組を8本、そして5〜12分くらいの映像作品を6本制作しました。音声コンテンツ制作では、インタビューの基礎を学び、コントの脚本や演技にも挑戦しました。また映像制作では、深夜に及ぶ編集作業を続け、自分の声でナレーションを吹き込んで作品を完成させました。

グラフィックデザイン

年間を通してサイエンス・カフェ札幌(第51回〜56回)のポスターを6種、制作しました。そのほか前期には「生命体とは何か」をテーマにしたデザインコンペティション「青山芸術祭DESIGN AWARD 2010」に応募、受講生の一人松原忍さん(環境科学院)の作品が入選しました。後期はサイエンスグッズ(科学教材)のデザインに取り組み、その成果を札幌市立青少年科学館で発表しました。北海道で絶滅が心配されている動物たちを取りあげ、自然界のバランスを考えるためのワークショップを開催して好評を博しました。「誰のための表現か」「何を伝えたいのか」を徹底して考えることで、デザインとは何かを学び実践する、貴重な機会となりました。

サイエンス・カフェ

本科受講生25名が5つの班に分かれ、それぞれ異なるテーマのサイエンス・カフェの制作に取り組みました。開催されたカフェは以下の通りです。

● 北海道の地域産業を元気にしたい! 〜「大学人として何ができるか?」を想い、チャレンジし続けてきた20年〜 (ゲスト:須田孝徳さん)

● コミュニケーションする脳!? 〜脳をカオスで語る〜 (ゲスト:津田一郎さん)

● 化石に秘められたミステリー 〜恐竜からのタイムカプセル〜 (ゲスト:小林快次さん)

● 下を向いて歩こう♪ 〜科学者と見る北大研究林〜 (ゲスト:柴田英昭さん)

● 「森の上の雲」シベリアを環る水の話 (ゲスト:杉本敦子さん)

● 知性が生まれるとき〜粘菌の不思議に学ぶ〜 (ゲスト:上田哲男さん)

受講生は、共同でサイエンス・カフェを制作することにより、科学技術に関する対話の場づくりを実現するための企画立案やリサーチ、話題提供者となる研究者との折衝、広報・集客、ワークショップのプログラムデザイン、ファシリテーション、チームマネジメント、評価などの考え方と手法を実践的に学びました。

選科

演習A

夏に3日間、参加・体験型イベントの企画者・進行役に求められる企画・プログラムデザイン・ファシリテーションなどのスキルを集中的に学びました。

1日目と2日目は、3日目に開催するミニ・サイエンスカフェの向けて、企画・プログラムデザイン・運営マニュアルやちらしの作成・ファシリテーションなどについて、グループワークを織り交ぜながら学びました。3日目には、4〜5人の班毎に、20分間のミニサイエンスイベントを実施。終了後全員で「ふりかえり」をし、成果物をとりまとめたポートフォリオも作成しました。

この演習の受講者は、札幌以外の地域に在住する人が多かったのですが、SNSやメール等を活用して積極的に取り組み、お互いの強いネットワークを築いてくれました。そのネットワークは、今後の各自の実践にとって、きっと大きな力となるでしょう。

演習B

「伝わる文章」を書くためにはどんな要素が必要なのか、わかりやすいとはどのようなことなのかなど、ライティング技術の基本的な枠組みを理解し、その応用を学びました。文章によるコミュニケーションの楽しさと難しさを実感しながら、ニュースに取り上げられた幅広い分野の科学技術のトピックス(レアメタル、家畜伝染病、深海熱水環境など)を説明する記事を執筆しました。これらの執筆した記事は技術評論社から一般向け科学書として今春出版される予定です。