2012年3月21日(水)に、CoSTEPと日本学術会議北海道地区会議の共催で開かれた三省堂サイエンスカフェ in 札幌。
ゲストに北海道大学大学院歯学研究科 口腔顎顔面外科学 特任教授の戸塚靖則さんを迎え、顎関節症について分かりやすくお話頂きました。
平日夜にも関わらず、会場は定員を少し超える31人の参加者で埋まりました。
冒頭、「顎関節症の経験者は?」と聞くと3分の1ほどの手が上がりました。
それ以外の方に、顎関節症プレチェック。指3本が縦に口に入るか、を試してもらいました。
実はこれが入らないほど口が開かなかったり、あるいはカクっと音が鳴るようだと 顎関節症が疑われます。
さっそく戸塚先生に「顎関節症」の症状、原因、治療法を説明してもらいました。
口が開かない、音がなる、顎の痛み、筋肉の痛みが主な症状です。
顎の動きは実に複雑で、食べ物をかむときには上下、左右、斜め、回転など様々な動きをします。
しかし、その動きがストレス、かみ合わせの異常、歯ぎしり、食いしばりなどで 関節を支えるクッションがずれたり、筋肉がこわばってしまったりするとうまく開かなくなるのです。
先生によると症状を訴えて病院に来るのは、20代〜30代の女性が多いそうですが、病院に来ないだけで、10代〜80代と幅広い世代に起こる病気である、とグラフで示してくれました。
治療法は症状に合わせて、保存療法と外科的療法を行います。ストレスが原因の患者さんには、病気の説明を丁寧にするだけで、痛みが軽減する方もいるそうです。その他に、筋マッサージ、スプリント(マウスピース)療法などを行うと数か月〜半年程で約95%の人が治るそうです。外科的療法は、炎症を起こしている物質を洗い流すなどの処置をします(写真下)。
でも一度治っても油断は禁物。自分でできる予防法は、ストレスをためない、顎や首の筋肉マッサージ、偏咀嚼をしないなど。戸塚先生自らマッサージする部分を教えてくれ、参加者も一緒に手を動かしました。
質問タイムでは、顎関節症に長年悩まされてきたという切実な声や、患者さんにアプローチするにはどの方法がいいのかという医療関係者の問いかけ、またこの病気は何科を受診すべきかといったさまざまな質問に戸塚先生が1つ1つ丁寧に答えてくれました。その答えに笑顔になった参加者を見て、この病気の患者が多いのだと実感しました。
会場のアンケートでも「身近なテーマで良かった」「分かりやすかった」「病気の経験者として役に立った」などの感想を頂きました。人々の「知りたい」に「分かりやすく伝える」。双方向コミュニケーションの重要性を実感した90分でした。
高齢化社会の日本ですが、自分の歯で最後までおいしく物を食べられるのはとても幸せなことです。
そのためにも年に1〜2回は歯科検診に行くのをお勧めします。