1月17日(土)10:00~12:00に、ワークショップ「持続可能な漁業を考える ~魚の購入から見るみんなの価値観~」を開催しました。
sapporo55ビル北海道教育大学サテライトにて
これは、第79回サイエンス・カフェ札幌「フカヒレ、いかがですか? ~気仙沼のヨシキリザメ漁をとりまく科学・経済・価値観~」(2014年12月14日(日)開催)で採りあげられたテーマについてより深く考えたり議論したりするための、“サイエンスカフェ連動型”特別ワークショップです。企画・運営は、今年度CoSTEP本科生の「対話の場の創造」実習の受講生が担当しました。
ワークショップの目的は、以下の通りです。
- 参加者が持つ多様な価値観を目に見える形で表現する。
- 自分自身の持つ価値観や他の参加者の価値観の多様性について改めて考えたり語り合ったりする機会を提供する。
- これらを通じて、「持続可能な漁業」のあり方についてこれまでとは違う視点で、多角的に理解を深めるきっかけを提供する。
今回のワークショップは、参加者のみなさんにはまず前述のサイエンス・カフェに参加してもらい、次にウェブ上でのアンケートに回答してもらい、その結果を整理したものを当日改めて参加者に配布し、それを踏まえてさらに先の議論をしてもらう、という形式を採用しました。サイエンス・カフェに参加できなかった参加者には、インターネットを通じてカフェの記録動画を視聴してもらいました。これは、あらかじめカフェの内容を理解しておいてもらうことでワークショップでより深い議論を行うことを狙いとしたものであり、いわば、「反転授業」ならぬ「反転ワークショップ」であるとも言えるでしょう(参考:告知ページ)。
また、上記のアンケートは、AHP(Analytic Hierarchy Process:階層分析法)と呼ばれる、複数の選択肢の中から最適のものを選ぶための意思決定・合意形成の手法を応用して設計されました。AHPでは、複数の評価基準を設定してそれぞれの観点から各選択肢を採点し、それらの採点結果を特定の計算方法で総合して、最適な選択肢を決定します。
ただし今回のアンケートは通常のAHPとは異なり、「最適な選択肢を決定すること」そのものを目的とはしませんでした。一つ一つの設問に答える際に回答者がどのようなことを考えたか、感じたかを自由記述欄に記入してもらい、それを整理してワークショップの場で参加者に配布し、参加者のみなさんが「自分の価値観」や「他の参加者の価値観の多様性」について新たな気づきを得て、それに基づいて意見交換をすることをねらいとしました。
参加者は8名。4名ずつ2つのグループに分け、スタッフがそれぞれのグループにファシリテーター、サブファシリテーターとして付き、参加者のディスカッションを支援しました。第79回サイエンス・カフェのゲストの石村学志さんにも再びお越しいただき、参加者からの専門的な質問に答えて頂きました。
ディスカッションでは、様々なバックグラウンドと様々な価値観を持った参加者による活発な議論が行われ、充実した学びと発見の場になったのではないかと感じられました。
今回のワークショップでは、以下の二つの新しい試みを行いました。
- サイエンスカフェの参加者ないしは記録動画の視聴者を参加の条件とすることで基本的な専門知識は事前に学んでおいてもらい、会場ではより深い議論を実現することをねらいとした「反転ワークショップ」形式を採用した。
- AHPを応用したアンケートに事前に回答してもらうことで、参加者の様々な判断基準や価値観、主張についての情報をあらかじめ整理して当日共有し、個々人の価値観の多様性と「持続可能性な漁業」の関係について議論ができるようなプログラムデザインを行った。
CoSTEPでは今後も、新しい「対話の場の創造」に向けて、チャレンジを続けていきたいと考えています。