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「理科教育」「科学技術コミュニケーション」をつなぐ「≠」を「≒」に!

2016.4.1

札幌創成高校で生物科の教員として勤務している村山一将(ひでのぶ)です。私とCoSTEPの出会いは、今をさかのぼること10年前、学部4年の6月でした。当時から教職志望だった私は、教育内容、特に生物教育の高度化・複雑化を背景に、伝統的な知識伝達型の教育は限界かもしれないという漠然とした問題意識を抱えていました。そんなときに、科学技術コミュニケーションという新しい分野に切り込んでいくCoSTEPの活動を知り、心が躍ったものです。結果的には、他大学の修士課程に進学することになり、一度はその夢をあきらめたわけですが、それからの10年間は「いつか必ず!」という思いを胸に過ごしてきました。ちょうど初めて卒業生を出し、教員としての修業が一段落した節目の年に、こうしてCoSTEPを受講できたのは必然だったのかもしれません。

とはいえ、働きながら(かつ子育てしながら)の受講は予想よりもはるかに大変でした。本業が最優先なので当初から修了そのものを目的にしていたわけではなく、両立しながら1つでも2つでも知識を吸収できればいいくらいに軽く考えていたこともあり、何度もくじけそうになりました。しかしそのたびに、先生方の励まし、そして周囲の若く熱い仲間たちの姿から大いに刺激を受け、「はじめたからにはやり遂げたい!」という気持ちを新たにすることができました。社会人受講生にとってこのような関わり合いというのは、何よりも有難い経験だったように思います。

受講していく中で、私がこれまで学び取り組んできた理科教育と、科学技術コミュニケーションは、似て非なるものであると考えるようになりました。理解すべき内容があり、それを「教える」というのが教育です。でも科学技術コミュニケーションは、社会の文脈に沿う形で、市民と研究者とコミュニケーターが一体となって「学んでいく」場なのです。また、その場かぎりで終えるのではなく、それをきっかけにして三者それぞれの行動を変えていくという思いが込められているのも、従来の理科教育とは少し異なる部分だと感じています。

CoSTEPでは、このような活動をするのに必要なありとあらゆる知識・技能を、これまた実に多種多様な方法で鍛えてくれます。すぐに高校の授業や行事指導の際に役立つネタも盛りだくさんで、どんどん使わせてもらいました。来年度以降につながっていくプロジェクトもいくつかあり、可能性が次々に広がりつつあります。特に北海道の初等中等教育に関わる若い理科教員のみなさんには、最高の教育プログラムです。ぜひ本科で受講して、「理科教育」と「科学技術コミュニケーション」のつながりを一緒に考えましょう!

村山一将(本科 ライティング・編集実習)
札幌創成高校 理科主任