Articles

91サイエンスカフェ札幌「人類たずねて三千里異文化フィールドワーカー 幸せを考える〜」を開催しました

2016.11.30

11月4日(金)に、北海道大学大学院保健科学研究院教授の、山内太郎さんをゲストにお招きして、第91回サイエンス・カフェ札幌「人類たずねて三千里 〜異文化フィールドワーカー 幸せを考える〜」を開催しました。

(山内太郎さん / 北海道大学大学院保健科学研究院 教授)

今回で91回目を迎えるCoSTEPのサイエンス・カフェ札幌は、紀伊國屋書店から場所を移し、2016年7月にリニューアルオープンした北海道大学総合博物館のオープンスペース「知の交差点」にて行われました。定員が40名と、普段のサイエンス・カフェ札幌よりも人数を絞ることで、研究者を巻き込んだ市民同士の対話の場を創造することを狙いました。また、それは今回のゲストである山内さんの希望でもありました。

通常は休日の午後に行うことが多いのですが、開催時間を平日夕方とし、会場に併設する「ミュージアムカフェぽらす」の協力により気軽に軽食やアルコールも楽しめる場を用意しました。

(たくさんの民族雑貨で会場が彩られます)

人類生態学が専門の山内さんは、アフリカ、アジア、オセアニアの農漁村、都市、伝統社会においてフィールドワークを展開し、人々のライフスタイルと健康、生活環境への適応について調査研究を行っています。課題を抱える開発途上国での研究を長年行う中で、「何か課題解決に寄与することはできないか」「その課題解決の先にある、人にとっての幸せとは何か」について考えるようになったと言います。

カフェは三部構成で行いました。第一部は山内さんの研究について。人類生態学とは何か、異文化の中でフィールドワークを行うということはどのようなことなのか、また何故幸せについて考えるようになったのかを山内教授にお聞きしました。現地の様子を映し出した写真と、実際の体験に基づいたお話に、参加者の方々も興味津々の様子でした。

(山内さんのお話に耳を傾ける来場者)

第二部は質疑応答です。「フィールドで食べたもので一番美味しかったものは何ですか?」といったものから「実際にはどのように課題解決、そして幸せに寄与できていますか?」という鋭い質問まで、様々な質問が飛び交いました。和やかな雰囲気の中、ビールを手にした山内さんとのやりとりが進められます。

(鋭い質問に頭を抱える山内さん)

第三部はテーブルトークと題し、参加者でテーブルを囲んでグループを作り、第一部、第二部の感想についてざっくばらんにお話しをしてもらいました。山内さんも各テーブルをまわり、対話に入って行きます。それぞれのテーブルには、CoSTEPの受講生も入り、「もっと語り合う時間が欲しかったです」と意見があるほど、対話が盛り上がっていました。

(初めて出会った方々と、山内さんのお話を肴に)

最後は山内さんに「人間にとっての幸せとは?」という質問をお聞きしました。山内さん曰く「他の人のためになること」「楽観主義」がキーワードとのこと。これは平等性を大切にし、平和に暮らす狩猟採集民族の生活から見えてきたことだと言います。

人類の暮らしは、約1万年ほど前に狩猟採集中心の生活から農耕中心への生活へと、大転換が起こった言われています。都市で近代的な生活を送るようになった人々や、現在も地域社会で農耕中心の生活をしている人々の調査だけでなく、山内さんは狩猟採集民族の生活にも注目しました。しかし、1万年もの時を遡ることはできません。その代わり、現在でも狩猟採集型の生活が残っている地域を調査するため、約1万キロも旅をしてその人々に会いに行きます。山内さんの調査地の一つであるカメルーンまで、日本から約1万キロ。尺貫法に変換すると約三千里。

そんな話をほろ酔い気分で聞きながら、盛会のうちにカフェは終了となりました。


(山内さんとCoSTEPスタッフ、そして受講生で記念撮影)

今回はたくさんの新たな試みに挑戦したカフェになりました。アンケートからは、少人数ながらも対話をしっかりと行うことができたこと、和やかな雰囲気であったこと等、暖かい評価をいただくと共に、より良い場にしていくための課題も見えてきました。

CoSTEPは今後も様々な形式で対話の場生み出していきます。