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2017年度リスクコミュニケーション実習第一回目実施

2017.7.1

2014年度から継続しているリスクコミュニケーション実習が今年も6/24から始まりました。今年はe-learningでの受講もあわせ12名が参加しています。例年、学生たちが福島の第一原発周辺の市町村を訪れて、聞き取り調査などを行っています。

今回は国立保健医療科学院の山口一郎先生と、伊達市放射能健康相談窓口で相談員として活躍されている地域メディエイターの半谷輝己 (はんがいてるみ)さんに講師をお願いしました。

■「リスクコミュニケーション実習概要」(早岡先生)

まずは、CoSTEPの早岡英介先生から、本実習で行う活動の概要と、リスクコミュニケーターと科学技術コミュニケーターの関係性、リスクコミュニケーションのための課題設定をいかに行うかといった点について講義がありました。

早岡先生によるレクチャー

2017年3月末で福島第一原発周辺の浪江町や飯舘村の帰還困難区域を除く地域などで避難指示が解除され、避難指示区域は最大時の1/3まで縮小しました。しかし富岡町では復興庁の意向調査でも「町に戻りたい」と回答した住民は16%にとどまるなど、多くの困難を抱えています。

この実習ではその時々の被災地の実情にあわせて、実習内容を柔軟に設定しています。昨年から、旧・避難指示区域の生活再建や復興をテーマに、コミュニケーションの場を作ることを目標としています。

こうした実情は、録画したNHKのニュースを見るなどして、改めて学生たちに状況を認識してもらい、我々が設定すべきリスクコミュニケーションの課題について考えました。

■「放射線の基礎」(山口先生・半谷先生)

次に、山口一郎先生(国立保健医療科学院・生活環境研究部・上席主任研究官)から放射線クイズなどを入れながら、「科学技術コミュニケーションってなんだ?社会と科学の公共的な性質」というレクチャーがありました。

山口一郎先生(国立保健医療科学院)

政府機関から公開されている環境モニタリングデータがいくつか紹介され、参加者間での認知の違いを確認しました。東電福島第一原発事故由来の放射性物質のうち食品での検査としては北海道からはじめて検出されている核種があることも紹介しました。

それが何を意味するかを参加者の方々はそれぞれ考えたことと思います。また安全を確保するための基準を誘導するためのシナリオの違いも紹介しました。このように放射性物質のリスクを考える課題の特性をそれぞれの方に改めて考えてもらいました。

山口先生のレクチャー

それから、ジュールやグレイ、ベクレル、シーベルトといった単位に関する基礎知識、放射線量の計算法などに関する解説がありました。難しい話になると、塾講師の経験豊富な半谷さんが絶妙なタイミングでツッコミを入れるなどして、和気あいあいとレクチャーは進行しました。

そして山口先生から、受講生たちにぜひこの実習を一緒に作りあげていきましょうと呼びかけをしていただきました。

■「おいしいキノコと毒キノコ~そして放射能との付き合い方」(半谷先生)

今回の実習では昨年度のように一から企画案を受講生たちが考える形ではなく、事前に山口先生、半谷さんとCoSTEP側で、「キノコを通したリスクコミュニケーション」がテーマ案として上がっていました。

半谷輝己さん(地域メディエイター)のレクチャー

四季折々のキノコや山菜を食べることは地域の伝統的生活や食文化を維持し、精神的な健康を保ち、地域に誇りを持つために重要な意味を持ちます。しかし、キノコはセシウムを集める性質もあるので、野生キノコでは1kgあたり数万ベクレルといった高い濃度の放射性セシウムが計測されることもあります。

福島でイノシシの鼻に似ていることから「イノハナ」と呼ばれるイボタケ科の野生のキノコがあります。厳密には「コウタケ」と「シシタケ」というキノコの2種類をまとめてそう呼んでいます。

以前は福島の山間部の住民にとって当たり前だった、こうした山の幸をいただくことがリスクになってしまいました。悲しいことですが、出荷するわけでなければ、そして若い世代に強制するのでなければ、自己責任としてリスクをよく考えた上で決定することができます。

大事なことを省かれたまま、聞きたくもないのに、一方的に伝えられるリスクに関する事実とは違って、自分達でリスクへの対応を主体的に考えている事例や、それを行政機関やNPO団体がサポートしているケースを半谷さんが紹介しました。

もっとも、このような試みでリスクが定量的に伝えられることは稀ではありますが、一方的に押し付けられたリスクの場合、人々が奪われた権利を回復することについても重視する必要があります。

懇談会の様子

レクチャーの後、山口先生と半谷さんを囲んで、お茶とお菓子を用意して、懇談会も行いました。講義を聞いて学生たちがそれぞれ感じたことを話し、お2人とざっくばらんにコミュニケーションをとることができました。


http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/59579