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CAMP アートとの様々な出会い vol.1 「光」を開催しました

2017.10.1

アートとの様々な出会いを求めて繰り広げられるトークイベント、CAMP(CoSTEP Art Meets Project)。一回目のトークイベントを9月29日18:00から90分間、遠友学舎で行いました。CoSTEPの奥本と朴が、一つのテーマを設定し、それに関する科学的現象と、その現象から連想するアーティストの作品を紹介していく企画です。第一回目のテーマは「光」でした。

光がテーマになった理由は二つあります。

まず、「CAMP」は、現在進めている「まだまだ見えない」プロジェクトの一部として開催されました。「まだまだ見えない」は朴がアーティストとして、科学な光を探すために北大を旅するプロジェクトです。札幌国際芸術祭2017を機に、科学とアートを共に考える場を設けたいという考えから、科学者へ研究に関するインタビューを行い、その話から着想を得て作品制作を行う「まだまだ見えない」。今回、CAMPでは、そのインタビュー内容を共有するために実施されました。

また、もう一つの理由として、朴が作品制作で主に用いているメディアが「光」であることから、アートにおける光、科学における光のつながりについて話し合いたいという思いから、テーマが設定されました。

会場も、様々な光を体験できるようなしつらえにして、トークが始まりました。

出会いⅠでは、光の干渉の現象の一つである「ニュートン環」について説明し、そこから奥本が「真珠の耳飾りの少女」で有名な「ヨハネス・フェルメール」の紹介を、朴からはダダイズムの「マン・レイ」を紹介しました。レンズ、そしてそこからカメラが発明されたことによって、アートにおける光の描き方は劇的に変わります。ニュートンと同時期に活躍したフェルメールは、カメラオブスキュラというカメラの技法を用いて作品を制作したと言われており、カメラと絵画の初期の出会いを象徴する画家です。続いて、近代に活躍したマン・レイの写真や映像作品を例にあげ、現像手法の一つであるソラリゼーションを紹介し、二つの物が重なることで現れる模様について話が展開されました。

出会いⅡでは「ささやきの回廊」という音波や光が閉じこめられる科学の現象を説明し、そこから朴がアメリカの現代アーティスト「ジェームズ・タレル」を、奥本がドイツのロマン派の画家「カスパー・ダヴィッド・フリードリヒ」を紹介しました。アーティストたちは光をどのように閉じ込め、そこから何を伝えようとしたのか、を光を主題とみなしている作品から読み解きました。

最後の出会いⅢでは、朝永振一郎の有名なエッセイ「光子の裁判」にも紹介された、光が波であり粒であるという二重の状態を保持しているという不思議な科学の現象を受けて、点描画で知られる新印象主義の「ジョルジュ・スーラ」と、日本のもの派を牽引した韓国作家「李禹煥」を紹介しました。光を粒として表現したスーラや、物と物との関係性について重層的表現で提示した李の話から、ある事実の複数の状態という科学的現象と芸術学的表現の重なりが見えてきました。

トークの後半には質疑応答やコメントを言い合える時間を設けました。科学とアートとの意外な繋がりを感じたという意見や、作品に関する質疑、鑑賞方法に関する話が続きました。

今後も2ヶ月に一回ほどのペースで、テーマを設定してトークイベントを行っていきたいと思います。来ていただいた参加者のみなさま、ありがとうございました。