パワポは楽しい
日置 幸介
北海道大学大学院理学研究院教授
2015.3.18
CoSTEP 10周年に寄せて、科学を伝える道具として講義や発表で使うパワーポイント(略称パワポ)について一言。
パワポを使い始めたWindows 3.1の頃はスライドの作成や描画に用いており、発表では印刷してOHPで見せるのが普通でした。スライドショーが一般化したのは今世紀初めです。WindowsがXPになった頃、アニメ機能が急速に充実、学会発表でも散見されるようになりました。私も新たな表現を目指して、「動く」スライドを作るようになりました。
現在行っている理学部講義(地球内部物理学)では、地球の公転や自転、その変動など、板書で表現しづらい現象を易しく伝えなくてはなりません。そんなときパワポのアニメ機能を使うと驚くほどわかり易くなります。例えば太陽に最も近い水星の公転周期と自転周期が3:2の簡単な比になる理由は、太陽の潮汐力が一番強い近日点で、三軸不等楕円体である水星の長軸が太陽を向くのが力学的に安定だからです。パワポでは図形を任意の周期・位相で回すことができますが、アニメで水星の運動を表現すると理屈を直観的に理解できます。
脳内に湧き出たイメージを可視化することで思索を補佐するパワポは、ただのプレゼンソフトではなく、考えるための楽しい道具でもあるのです。http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~heki/ppt/Gallery.pptx のよりぬきスライド(単なる受け狙い多し)をご笑覧下さい。CoSTEPの実習にもいかが?