コミュニケーションから共有へ
敷田 麻実
北海道大学観光学高等研究センター教授
2015.3.18
望ましいライフスタイルの実現は現代社会の最優先課題である。そのため、専門家による価値創造への「期待」や「信託」も増加する。社会のリクエストによって専門家は存在しているが、求められた以上のことを達成して、専門家はイノベーティブに価値を生み出す。そこで、より高い専門知識や技能を持つ「とがった」専門家が求められている。
しかし同時に、専門性そのものを理解した上で、科学の持つルールや特性について、非専門家である市民の相談に乗る役割も増大する。市民は好むと好まざるに関わらず、科学技術にさらされる。また、誰もが職業や活動で専門分野を持てるとはいえ、すぐ隣の分野では「素人」にすぎないからだ。
そのために、医療でいう「総合診療医」や「家庭医」が求められている。市民である私たちと同じ視点で悩みつつも、専門家としての視点で冷静なアドバイスができる人材が社会には必要である。
CoSTEP、「科学技術コミュニケーター養成プログラム」では、「科学技術における家庭医」、「素人の感覚を持つ専門家」を育ててきた。科学技術コミュニケーターには、専門的な知識の理解だけではなく、市民の常識的な感覚を共有することが求められる。その点ではCoSTEPのCoは、共有、つまりCommonのCoでもあるだろう。