CoSTEPとの不思議な「つながり」
10周年おめでとうございます。実はCoSTEPと私は不思議な「つながり」があります。
まず、なんと言っても特任講師の早岡英介さんの存在です。
私は北海道大学理学部化学科を卒業後、大学院を中退しNHKに就職。NHKでは「科学大好き土よう塾」や「サイエンスZERO」などの科学番組を制作してきました。それらの番組で何度もディレクターを務めてくれたのが早岡さんです。「サイエンスZERO」の腸内細菌をテーマにした回では、北大出身でヤクルト研究所に勤める知人を早岡さんと取材し、東京・吉祥寺でジンギスカンをつつきながら番組の構成を練ったこともありました。そんな仕事仲間が突然転職してCoSTEPの教員になったのですから、そもそも『つながり』はただごとではありません。
その後、2010年3月のCoSTEP修了式では、早岡さんにシンポジウムのゲストとして呼んでいただきました。そのときCoSTEPを案内されてビックリ! 当時CoSTEPがあったのは旧理学部本館、いまの博物館の北館2階です。そこは私が理学部化学科の学生だった頃、研究生活を送っていたまさにその場所でした。そしてCoSTEPの本部らしき部屋を見てさらにビックリ!! なんと当時の指導教官だった教授室ではありませんか。
大学院1年のとき、たまたま手にしたNHK職員の募集案内。ダメでも大学院に残ればいいと、軽い気持ちで極秘に就活を始めました。しかしいざ内定が出ると、なかなか教授に切り出せません。意を決して教授を訪ね、「就職が決まったので大学院を辞めます」と言ったときの耐えがたいほど重い空気に包まれた教授室……。そこがCoSTEPの本部らしき部屋になっていたのですから、運命ともいえる『つながり』を感じざるをえません。
つながりはさらに続きます。2013年1月に実施した「すイエんサー」の公開収録では、CoSTEPも参加することで、前例のないほど盛り上がりました。NHKと大学組織が手を組むことで、番組制作の新境地を見出すことができたのです。このとき感じたのが、CoSTEPのオープンな気質です。好奇心たっぷりに前向きに挑戦するCoSTEPのスタッフの姿を見て、科学技術を市民に伝えるという使命に燃えるCoSTEPの可能性を大いに感じました。
聞くところでは、CoSTEPのように外部から実務経験のある人材を教員として採用したり、独自の大学組織として科学コミュニケーション活動を精力的に継続している組織は他に例がないとのこと。ぜひとも今後10年、20年、北極星のような唯一不動の存在として、持ち前のフロンティアスピリットで、日本の科学コミュニケーションを切り開いていくことを期待します。そしてCoSTEPと私との『つながり』も、より強固なものにしていければと思います。