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112 サイエンスカフェ札幌オンライン in 函館「地球を旅する元素のゆくえ大気と海、海と堆積物をめぐるヨウ素のナゾ~」を開催しました

2020.8.27

2020年8月23日(日)、大木 淳之さん(北海道大学 大学院水産科学研究院 准教授)をゲストにお招きし、第112回サイエンス・カフェ札幌|オンライン in 函館「地球を旅する元素のゆくえ〜大気と海、海と堆積物をめぐるヨウ素のナゾ〜」を開催しました。最大視聴者数は120名でした。オンラインでのサイエンス・カフェ札幌は今回で、2回目となります。このカフェは、はこだて国際科学祭のイベントのひとつとして、函館の大町にある、明治建築をリノベーションしたイベントスペース、港の庵から配信を行いました。

今回のカフェは、北海道函館中部高等学校スーパーサイエンスハイスクール(SSH)との高大連携事業の一環としても位置づけられています。参加した函館中部高等学校SSHの高校1年生は、学校の教室からZOOMを使って、ゲストの大木さんに直接メッセージを送ってもらえるように準備をしました。カフェの目的の一つは、SSHの高校生に「研究する」ことについて知ってもらうことでした。そこでまず、聞き手を務めた種村(CoSTEP特任講師)が「研究する」とはどういうことなのかと、大木さんに質問をしました。大木さんは、研究することは、テーマを選び、新しい問いを立て、問いに対して仮説を設定し、検証を行い、結果を報告することと応えました。今回のカフェも、この研究のプロセスをストーリーの軸にして話を進めていきます。

まずは、大木さんの研究テーマ「ヨウ素循環」の紹介からです。最初に、ヨウ素について説明してもらいました。周期表を印刷したシャツで、原子番号と列を明らかにしたり、函館名産のガゴメコンブを取り出したりしつつ、ヨウ素デンプン反応の実演も行い、ヨウ素が私たちの身近にある元素であることを示しました。次に、ヨウ素の物質循環について説明してもらいました。海中にイオン化して存在するヨウ素が、海洋植物に吸収され、有機ヨウ素に変換され、それが堆積したり、ガスになって洋上に放出され、光を浴びて分解され、雨に混じって陸に降り注ぎ、そして再び海に流されていく過程をパネルを使って説明しました。デジタル配信の中で、あえてアナログな手法を用いることで、体の動きとともに「循環」を説明します。

次に「問い」と「仮説」です。今回、大木さんから紹介してもらう問いは「光に当たると分解されてしまうジヨードメタンが、なぜ光が当たる海中表層には存在するのか?」でした。日中、大気中の濃度がゼロになるジヨードメタン、なぜ海中では、光があたっても存在するのでしょうか? この問いに、仮説を立てるのが研究のプロセスです。仮説とは「なぜ、どうして?」の問いに対する「〜だからではないだろうか」のセンテンスで表現される事柄です。大木さんの仮説を紹介してもらう前に、カフェでは「仮説大喜利」を行い、視聴者からの仮説を募集しました。

次は「検証」です。このパートでは、北海道大学の練習船、おしょろ丸、うしお丸での洋上調査の様子を動画で紹介しました。動画は、北海道大学バランスドオーシャン事業から提供してもらいました。また、大木さんからは、調査で実際に使用する採水管を持ってきてもらい、その仕組みを紹介してもらいました。

結果発表の前に、視聴者と大木さんの対話のパートを盛り込みました。視聴者からは「仮説が覆されたときの気持ちは?」「高校の科学部で調査をしているがなかなか結果がでないのです、そんなときはどうしているのですか」といった質問が寄せられました。大木さんは、それぞれの質問に丁寧に答えてくれました。

最後に明らかになった「結果」は「まだ検証中」でした。検証の結果、仮説が正しくないとわかれば、また新しく仮説を作り、検証を行います。また、仮説がうまく実証された場合、そこから新しい問いが生まれます。そうやって、研究者は研究を行っていくのです。

大木さんから、視聴者、特に高校生に当てたメッセージは「どんな職業も科学のプロセスを当てはめることで、より創造的な仕事ができるようになる」ということでした、問い、仮説、検証の研究のプロセスは創造的な仕事をするための普遍的な手法といえるでしょう。そして「このプロセスを通じて、ほんの少しでもよいので、今まで誰も見つけてない、新しいことを発見して欲しい」と高校生にエールを送りました。

大木さん、ありがとうございました。