アドバイザーの方々からお寄せいただいたコメントの中から,公開に同意頂いたものについて以下に掲載いたします。
岡田 小枝子|高エネルギー加速器研究機構(KEK) 広報室 室長
やや辛めのコメントでご容赦頂ければと思います。科学コミュニケーションの10年を振り返るということで、各科学コミュニケーションセクターの代表が寄稿し、日本の科学コミュニケーション10年が俯瞰できるものと期待しておりましたが、実際にはCoSTEPの10年から振り返ったものに留まっていた感があり、やや残念でした。いっそ、10周年誌に寄稿した人たちに、もう少し突っ込んだ論考を発注すればよかったかもしれません。
ただ、もちろん今号のいずれの記事も、大変参考になる知見に富んだコンテンツでした。
(2015/1/28)
重田 勝介|北海道大学情報基盤センターメディア教育研究部門 准教授
本号は前号または前々号と比較して、科学技術コミュニケーションの成果や意義に関わる論考や実践を数多く取り上げており、CoSTEP10年目という節目を鑑みても大変充実した内容になっており、大変素晴らしいと感じました。
CoSTEP10周年記念フォーラムに関しても詳細に取り上げられており、当日参加が叶わなかったご関係者または科学技術コミュニケーションに興味をお持ちの方々にとって大変有用な記録になったかと思います。
個人的には掲載論文の中で「異文化コミュニケーターとしての福沢諭吉 : 異文化コミュニケーションの視点から見た科学コミュニケーション」に大変興味を持ちました。我が国は長年来、海外の学問を「輸入」し独自の翻訳後を付けさまざまな解釈を加え、自国における学問として位置付け、さらに海外へと「輸出」してきた歴史があります(手前味噌ですが、私の専門分野である教育工学や教育技術も、根幹のフレームワークを欧米から取り入れ、我が国を経由してアジアへと広めていった経緯があります)。このような過去に為された科学技術コミュニケーションと呼べる取組の成果や意義、課題にもより注目が集まってよいのではと感じました。
科学技術コミュニケーションの実践を扱った論文については、教育的効果に関する分析が薄い点が気になります。学校内・外に関わらず、このような実践を科学技術に関する新しい考え方や見方、また人材育成の機会となる教育活動として捉え、その効果を多面的に検証することが、掲載論文の価値や本誌の価値を高めることにつながるのではと考えます。
(2015/1/28)
田柳 恵美子|はこだて未来大学社会連携センター 教授
JJSC第16号の全体をざっと斜め読みさせていただき、印象、感想、意見などごく簡単ですがまとめさせていただきました。
創刊号の頃に比べて、投稿者やテーマともに層の広がり、幅の広がりが見えて、本誌が大学紀要とは一線を画した、開かれた投稿誌として機能していることを強く感じました。
また、巻頭特集、報告、論文すべてを通して、非常に質の高い内容を編纂していることにも、改めて感心させられました。研究者としても実践者としても1つ1つがたいへん興味深く普遍的な内容のものと感じました。
今号の巻頭特集では、CoSTEP修了生の講演録が収載されていますが、第1に修了生の活躍の幅の広さ、開設当時からのねらい通り、各分野で質の高いスペシャリストとして活躍をされていることに感銘しました。
また講演録の編集をきちんとされていることも(元編集者としての目線からも)よく見て取れ、読みやすく簡潔なまとめに感心しました。
論文は1本ですが、海外の論文誌にも十分通用するような独創的な学術論文と見受けられ、また東工大からの投稿という学外から幅広く論文を受け入れており、科学コミュニケーションを研究分野としても高めていく学術プラットフォームとしての役割も果たしていると感じました。
後半の「報告」も、どれも読み応えのあるボリュームでかつきちんとした調査報告がなされており、1つ1つの質の高さを感じました。
これは思いつきレベルですが、論文と報告のあいだに入るような「実践論文」のようなジャンルを設けてもいいのではないかと感じました。ただし、ジャーナルとしての質の保証にもかかわってきますし、現実には実践論文的なカテゴリを設けて必ずしも成功していない論文誌も多いと感じますので、慎重な検討が必要かと思います。今号巻頭の講演録を読んで、こうしたスペシャリストの方々からの情報発信に対して、何か科学コミュニケーションらしいユニークな受け皿があるといいのではないかと思いました。
以上たいへん雑ぱくですが、一読のコメントを寄せさせていただきます。また時間を見つけてじっくり読ませていただければと存じます。
(2015/1/30)
野原 佳代子|東京工業大学留学生センター/社会理工学研究科 教授
はからずも今回、自分の指導学生による論文投稿を経験し、数度にわたり丁寧かつ詳細な査読をいただいたことに感謝しつつ、査読側の教育的姿勢に感銘し考えさせられたことがあります。
『科学技術コミュニケーション』は理系と文系をつなぐ学術雑誌であり、投稿する側のバックグラウンドもその境目にある場合が多いはずです。工学系文化で育った新人の場合、データ分析まではできてもその「社会・人文的考察」を論じ馴れておらずつまずくことが多い。しかしJJSCの査読側が「論文とは何か、考察とはどんなものか」の基準を明確に持って詳細なアドバイスを出してくれることで、学生にとっても背後で指導する人間にとっても、力強いレファレンスポイントになっています。
学術雑誌の査読は判定であるべきで教育とは一線を画すべき、とする論もあると思います。しかし新興分野の雑誌として、私は若手育成の視点からの意義を実感し、大切にしていただきたいなと思いました。もちろんスタッフの方々に大きな負荷がかかっていることは承知しています。
(2015/1/28)
2015年3月1日