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54サイエンスカフェ札幌レポート『下を向いて歩こう♪ 〜科学者と見る北大研究林〜』

2010.11.19

今回は、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの柴田英昭さんをゲストに迎えて、森と土の魅力について、さわやかに、そして時に熱く語っていただきました。

北方生物圏フィールド科学センターの柴田英昭さん

 

 

 

たくさんの方にご来場いただきました

北海道大学は世界一の規模を誇る研究林を持っています。道内に6ヶ所、本州に1カ所あり、総面積はおよそ7万haに及びます。以前は演習林と呼んでいましたが、2001年に農学部附属演習林を改組して、北大北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーションとなりました。

柴田さんの研究フィールドである雨龍研究林は、1901年、北大で最初に創設された約2.4万haの広大な森です。専門である「森林における土壌の役割」や「二酸化炭素や養分の循環」といった研究から明らかになってきたことを、分かりやすくお話しいただきました。

今回のカフェの特徴は、映像を活用し、パワーポイントなどのスライドを極力減らしたことです。

2010年9月16日から18日にかけて、私たちスタッフは、名寄市の森林圏ステーション北管理部の宿泊施設に泊まり込んで、雨龍研究林の森林や土壌の様子、そこで研究する大学院生などの姿を撮影してきました。

電線や建物など、人工物の一切無い、手付かずの森。人の声も町の音も一切無く、風にそよぐ木の葉の音、野鳥の声しか聞こえません。これほど広大な原生林の中に身を置いたのは、私たちにとっても初めての体験でした。

撮影するスタッフたち

また森や土の様子だけでなく、現地の研究者の声や調査の様子もカメラにおさめました。サイエンスカフェは、こうした映像を見てもらいながら話を進めました。少しでも皆さんに原始の森の空気や、現場の雰囲気を感じてもらえたらうれしいです。

左の画面で説明のスライド、右に映像を流しました

森の中にはササが密生しているので、その下の地面は真っ暗で、樹木の種が落ちても光が足りず、あまり育ちません。そうしたササの多い森では古い木が倒れ、その倒木が苗床になって、新しい命を育む、「倒木更新」という現象がみられます。

雨龍研究林での撮影で、倒木の前で説明する柴田さん

 

ササの下の土壌を見せていただく

林業では邪魔者扱いされるササですが、森林にとっては決して悪い影響ばかりでなく、土壌浸食を防ぎ、炭素を蓄積し、水質保全の役割を果たす等の役割があることも分かってきたそうです。

森の土を掘ってみると、有機物が豊富に含まれる黒い部分はとても薄いことが分かります。そのわずかな層が大きな樹木を支え、たくさんの生き物の住処となっているのです。

また森では、落ち葉や生物の死骸などの有機物が土壌微生物などによって分解されて土となり、それが栄養となって植物に吸収され、また新たな葉を作るというサイクルがあります。

人間社会ではリサイクルの仕組みを作るのも簡単ではありませんが、自然界ではあらゆる物質が循環しているのです。

時々、クイズも出しながら進行しました。

テーブルとして使われている大きなアカエゾマツの切り株をスクリーンに映し出し、樹齢を尋ねました。

切り株で作った大きなテーブル

フロアからは、100年、200年、300年、1000年と、オークションのように声が上がります。さらに同じアカエゾマツの小さな切り株を取り出し、この樹齢は?と会場に聞きました。

小さな切り株
レポート:安倍 隆(あんばい たかし:本科生)

写真撮影:安倍 晴日(あんばい はるか)

 

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第54回サイエンスカフェ札幌 テーマ:下を向いて歩こう♪ 〜科学者と見る北大研究林〜

日 時:平成22年11月13日(土)16:30〜18:00

会 場:sapporo55ビル1階インナーガーデン(紀伊國屋書店札幌本店正面入口前)

ゲスト:柴田英昭さん(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター准教授)