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ソーシャルデザイン実習「SAME, SAME, but DIFFERENT LIFE −2072年未来を生きる7人の日常−」展示報告

2022.3.24

坂本舞衣(本科 / 北海道大学理学院自然史科学専攻修士1年)

本科ソーシャルデザイン実習は、「未来における私たちの日常」をテーマに、大丸札幌店とオンラインサイトで展示を開催しました。

今回の展示は、参加者の誰もが、新しい時代の中で変わってほしい、あるいは残したい価値観とは何なのかを考え、2072年のありたい未来像をつくる場となることを目的に、2072年を生きる架空人物の持ち物とその人物の一言を展示しました。

想像した2072年:市民の政治参加のあり方が変化した社会
政治家になることを強制される男性の社会システムへの違和感を表した展示(井上)

想像した2072年:人間以外とのコミュニケーションが可能になった未来
日々の悩みを森林に相談する女性を表した展示(仰木)

想像した2072年:ロボットと人間の境界が曖昧になった社会
ロボットと人間の結婚を表した展示(大平)

想像した2072年:環境保護とおしゃれが両立可能になった社会
おしゃれに対する価値観の変容を表現した展示(木村) 

想像した2072年:フードテクノロジーが進化し、食料生産のあり方が変化した社会
機械的に生産される「食」へ不安や違和感を持つ高校生を表した展示(坂本)

想像した2072年:多様な弔いのあり方が存在する未来
植物にDNAを埋め込む形で愛するパートナーを弔う女性を表した展示(渡邊)

6人の受講生は、現在の社会システムや科学技術の動向、自身の価値観をもとに、2072年を生きる人々はどのような価値観を持ち、日常を過ごしているのかを想像し、6人の架空人物を創りあげました。その中で、2072年の未来社会は、2022年の現在とは一見変わらないところがありつつも、現在の価値観から見ると何かしらの違和感があるだろうと想像し、「SAME, SAME, but DIFFERENT LIFE −2072年未来を生きる7人の日常−」という展示名にしました。また、展示のメインビジュアルは、中央に曇りがかった「2072」を配置し、奥行きを持たせることで、見えそうで見えないぼやぼやした未来社会を表現しました。

科学技術が良くも悪くも大きな影響を持つ現在、科学技術をめぐる社会課題についての様々な立場の人たちによる情報共有や意見の相互交換を促進する科学技術コミュニケーションが求められています。しかし、ソーシャルデザイン実習の受講生は、様々な科学技術コミュニケーション活動をする中で、多くの人が対話をする前に、まず自身の意見を持つ機会がないのではないかという問題意識を持つようになりました。

また、受講生それぞれが科学技術コミュニケーションに対して閉じた印象やマイナスな印象を持っていました。そのような問題意識から、今回の展示では、従来の科学技術コミュニケーション活動に見えないような形で、科学技術やそれをめぐる課題に関して興味のない人が自身の意見を持つきっかけづくりの場となることを目標としました。

様々な人が行き交う大丸札幌店を会場とした9日間の展示では、多くの参加者からコメントを集めることができました。これまでの科学技術コミュニケーションの活動の中でリーチできなかった層に触れられたことをよかったと感じるとともに、その層にメッセージを届けることの難しさを感じました。

以上のように、今回の展示は、ソーシャルデザイン実習の受講生たちの、科学技術コミュニケーションへの問題意識から企画されたものでしたが、その課題を乗り越えることの難しさを学ぶ機会になりました。また、受講生同士で2072年の社会を想像していく中で、個人の価値観や将来像を語り合う場面が多くありました。特に科学技術などは意識せずに、様々な意見を交換できたので、このような会話の延長で、気軽に科学技術コミュニケーションが行えたらな、と新たな方法を考えるきっかけとなりました。