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私にとっての科学技術コミュニケーションを考えはじめた1

2023.3.20

植村慎吾(2022年度 選科B/NPO法人バードリサーチ)

一緒にワクワクできる友達づくり

あなたにとって科学技術コミュニケーションとは?という問いに受講生全員が順番に答えたときの、私の回答です。この問いは、丸々3日間あった対面実習の最後の最後に投げかけられました。

CoSTEPの受講に至るまで

私は日頃、鳥類学の分野でデータの解析や調査研究プロジェクトの企画運営をしつつ、バードウォッチャーに向けてその成果や最新の研究を発信するという仕事をしています。就職前は北大の院生でした。学生のときには、自分の研究成果を学会以外にも地域の講演会や博物館、雑誌の記事などで発信することがあり、自分の研究成果への反応を聞くのは楽しいものだと感じていました。研究を面白がってくれる、ワクワクしてくれる人を増やすことは鳥類学のような基礎研究を盛り上げるために必要な活動だなと思って、現在の職での発信にもやりがいを感じています。

しかし、就職してから自分の研究以外の色々な発信をするようになって、だんだんと、鳥の専門家ではあるけど伝えることの専門家ではない、ということが心に引っ掛かるようになってきました。サイエンスライティングやサイエンスコミュニケーションについて体系的に学んだことがなく、仕事で書いている文章へのフィードバックも特にはないことが不安になってきたのです。

CoSTEPのことは北大在籍中に知り、身近に修了生もいました。科学技術コミュニケーションを身につける必要性を感じて受講を考え始めたのですが、修了生の話を聞いたりHPなどをみたりするうちに、受講生どうしの交流や科学技術コミュニケーターのコミュニティに参加するということもとても魅力的に感じ、受講を決意しました。

最先端の講義

まず、科学技術コミュニケーションを体系的に学ぶことは、自分の立ち位置を理解して、これから進めたいことを整理する上でとても役立ちました。受講生の質問をきっかけに、zoomやメタバースを利用したポストコロナの、これから体系化されるであろう最前線のコミュニケーションについての議論があるなど、質疑の時間もとても刺激的でした。講師の皆さんはそれぞれ多様な科学技術コミュニケーションを実践してきた方々で、全く知らなかったような事例をいくつも知ることができます。また、講義をオンラインで受講できる、もしリアルタイムで見れなかった場合にも録画で講義を受けることができるということは、仕事をしながら受講する上でとても助かりました。

選科B 怒涛の集中演習

私は現在は北海道にいないので、普段の講義はオンラインで黙々と受けていました。集中演習は、初めて他の受講生と対面で会って話す機会です。参加して皆さんと話して、本当に様々な目的、立場の受講者がいることに改めて驚きました。選科Bの演習では、いくつかの班に分かれ、受講生同士で文章を添削しながらより良い成果物をつくっていきます。お互いの目的や立場が全然違うからこそもらえるフィードバックはどれも発見に満ちていました。丸々3日間、書いては誰かに見てもらいの繰り返しだった演習を振り返ると、自分の文章を自分でチェックするときに必要な視点をイメージできるようになったと感じます。一日の終わりに同じ班のメンバーや講師の方とご飯に行き、それぞれの受講背景や今後やりたいことなどを熱く話したことも得難い経験で、受講生や科学技術コミュニケーターの仲間ができたと感じた瞬間でした。

選科Bの受講生としてCoSTEPに参加できたことは本当にありがたいことでした。修了生はそれぞれの場所で、あなたにとって科学コミュニケーションとは?という問いに答えていくことと思います。私も、この1年間で得た体系的な学びや多様な実践例の知識、同期の皆さんという関係を自信と武器にして、科学でワクワクできる仲間を増やす活動への意欲に燃えています!

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