2013年2月17日(日)16時30分から第68回サイエンス・カフェ札幌「地震の前に何かが起こる?−宇宙技術で探る大地のシグナル−」が開催されました。ゲストは北海道大学大学院理学研究院・教授の日置幸介(へきこうすけ)さんです。今月2日に最大震度5強を観測した地震が発生し、またテレビや新聞で開催が報じられたこともあって、約150名の参加によりカフェは始まりました。
今回のカフェでは東北地方太平洋沖地震の前に何が起こっていたのかを、GPSから得られたデータを元に説明していきます。取り上げ方によっては固くシリアスな雰囲気になる可能性もあったのですが、ファシリテーターとゲストの軽妙な掛け合いで、スタート時点から会場内には笑いが。緊張感もほぐれたところで、GPSで調べた普段の地面の動き、地震の時の動きと話が進みます。途中で“固着(こちゃく)”や“余効(よこう)すべり”といった耳慣れない用語が出てきましたが、図を用いて丁寧に解説していただきました。
日置さんは、地震の8年前から2日前までの大地の動きを解析し、「プレートの沈み込みが加速している」という仮説を提示します。北海道の近くでも将来大きな地震が起こる可能性があるという話に至ると、会場内は一瞬緊張感に包まれたようでした。
この後、話は地震の1時間前に。緊張をほぐす意味で来場者の方にクイズに答えていただきました。「地震20分前にGPSが捉えたものは何か?」という質問でしたが、高い正解率に日置さんも感心されていました。以降の話のポイントであるGPSで電離圏の電子数を測定することについては、カフェスタッフの寸劇によりその原理を説明しました。カフェで演劇というのは例が少ないですが、終了後、来場者の方から暖かい拍手をいただき、理解していただけた様子で安心しました。
休憩を挟み再開。カフェ後半では、今回GPSで捉えた上空の電子数の乱れが地震予知につながるのかについて議論が進みます。同規模の地震データが少なく、電子数の乱れが太陽放射活動等にも左右されうるという懸念もありますが、検証の結果、日置さんは予知に必要な条件が満たされていることを確認しました。震災から2年を迎える今日もなお社会の関心事の一つであろう地震予知ですが、現在の地震研究の限界と今後の可能性について言葉を濁すことなく伝えていただきました。
最後の質疑応答には予想以上に多くの質問が寄せられ、時間の許す限り日置さんにお答えいただきました。話題提供の際と同様、時にユーモアを交えながらも明確かつ丁寧に説明されたことで、質問された方も納得された様子でした。なお、当日いただきました質問の回答をこちらに掲載いたしましたので、ご確認ください。
真冬の開催ということで、会場内には時折冷気が入る状況でしたが、最後まで片時も目を離さず熱心に参加していただいた来場者のみなさんに、あらためて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
(レポート:2012年度選科生 金村直俊)
■質問の回答はこちらから → http://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/costep/contents/article/674/
2012年度カフェ実習5班:石井彩映子/遠藤恭平/金村直俊/永田修/野澤笑子/古川雄大