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選科A活動報告「イカらないで!~イカがいるのに、なぜ獲れない?~」

2026.10.22

チーム名:イカしたB班
メンバー:フジ(加藤絢)、だいじ(三浦大治郎)
むってぃー(武藤恵美)、るん(藤原留美子)
あっこちゃん(池田敦子)、ばっさー(佐々木翼)

1.「イカがいるのに、なぜ獲れない?」から始まった問い 

 「イカがいるのに、なぜ獲れない?」ー皆さんなら、この問いにどう答えるでしょうか。

イカ漁には、漁業従事者、行政、研究者、観光業者・観光客、消費者、さらに海洋生態系など、多様なステークホルダーが関わっています。本イベントでは、2025年に函館で起きたスルメイカの漁獲制限を題材に、「資源を守るためには獲らなければよい」「漁業者のためには獲れるだけ獲ればよい」という単純な二択では捉えられない問題を知ってもらうことを目的としました。その上で、異なる立場や価値観を持つ人々が、どのように信頼関係を築き、対話できるのかを視聴者と考えることを達成目標としました。

2.難しいテーマを、視聴者と楽しく・一緒に考えるために 

スルメイカの資源管理を一方的に解説するのではなく、YouTube Liveの特性を生かした双方向型の「サイエンスカフェ風・情報番組」として構成しました。複雑なテーマを、視聴者が楽しみながら、最後まで飽きずに考えられように、「起承転結」ー【起】問題を知る、【承】立場の違いに気づく、【転】問題点を整理する、【結】視聴者ともに考えを深めるーという流れを明確にすることを意識しました。

冒頭では、「函館で楽しみにしていたイカ釣りができなかった観光客」のVTRから、「なぜイカがいるのに獲れないのか?」という疑問を提示しました。その後、イカ研究者扮する「イカ君」が、イカの帽子をかぶった親しみやすい白衣姿で、生態や漁獲量、漁獲可能量(TAC)による資源管理を解説しました。

また、随所でコメント機能を用いて問いかけや回答を紹介し、視聴者が番組に参加できるよう工夫しました。さらに途中では、突然イカが配信を乗っ取る「イカジャック」を挿入。エンターテインメント性を加えるとともに、「もしイカにも言い分があるとしたら?」と、人間とは異なる視点から問題を捉え直すきっかけをつくりました。

最後には、漁業者、行政、科学者、消費者、観光客など、それぞれの立場によって事情や守りたいものが異なることを整理しました。その上で、「それぞれが納得できる関係をつくるにはどうすればよいか」を問いかけ、コメントを紹介しながら一緒に考えました。専門家が正解を示すのではなく、視聴者自身が「どうすればよいのか」を考えられる構成を目指しました。

インタビューVTRでの観光客の素朴な疑問を視聴者と共有

まさかのイカジャック!


コメント機能を活用して視聴者参加を促進

3.6人6色、それぞれの強みを生かして 

6人それぞれの専門性や特技、スキルなどの強みを持ち寄り、企画から当日のライブ配信まで協働しました。CoSTEPのイベントだからこそ「北海道」、そして唯一の学生メンバーがイカの研究に従事していることから「イカ」、この二つを軸にした企画にすることは、自然な流れで合意形成されていきました。

  • フジ:出演(司会者)、台本作成
  • だいじ:出演(イカ君)、イカ研究者として知見提供
  • ばっさー:VTR出演、イカ(イカジャック)の声、チラシ作成
  • むってぃー:VTR出演、動画編集、裏方(スイッチャー)   
  • るん:VTR撮影、スライド作成、裏方(スライド切り替え)
  • あっこちゃん:アンケート作成、Youtubeコメント

4.アンケートから見えた「対話」と「透明性」 

アンケート回答者は36名で、20代から50代以上まで幅広い年代が視聴しました。イベント前の海洋資源管理に関する知識は5段階評価で平均2.8でしたが(青色のバー)、イベント後の関心度は平均4.2(赤色のバー)、説明の分かりやすさも平均4.0と高く評価されました。

また、資源管理に伴う価格上昇については、36名中35名が一定の値上げを許容すると回答しました。その判断で最も重視されたのは「規制の透明性(意思決定プロセスの情報公開等)」で、61.1%を占めました。

 「資源管理における対話と信頼の重要性」という私たちが最も伝えたかったメッセージは視聴者に高いレベルで伝わった一方、関係者のコミュニケーションの場への参加意思(5段階評価)については、全体の44.4%が「3」と回答し、ニュートラルな層が多数を占める結果となりました。慎重な姿勢や様子見の層が一定数存在しているとも考えられる一方で、33.4%は明確に参加意思(4以上)を示していることも踏まえると、このイベントを通じて視聴者の行動変容を促すという目標は一定レベルは達成できたと考えます。4割強のニュートラルな層については今後の改善によって関与や理解を引き出せる「大きな伸びしろ」と捉えました。

実際アンケートの自由記述では演出への好意的な反応が得られたものの、「制度背景や課題のさらなる深掘り」や「多様な価値観の中で本コンテンツが果たす役割」といった本質的な課題や指摘も挙がりました。

サイエンスコミュニケーションにおいては、単に情報を分かりやすく伝えるだけでなく、「参加者との対話」が非常に重要ですが、今回は限られた時間の中で、親しみやすい演出・科学的説明の深さ・十分な対話の全てを盛り込む難しさを痛感しました。今後は主催者のメッセージを明確にしつつ、ステークホルダーの具体事例の紹介や投票機能など、インタラクティブな配信ツールを活用し、参加者が自由に考え、意見を交わせる「対話の余白」や時間をいかに確保するかが重要な課題です。今後の活動では、今回の学びを活かしてより深い対話と相互理解につなげていきたいと考えています。

5.「信頼」を伝えながら、私たちも「信頼」を学んだ 

イベント企画の点では、年代や専門の異なるメンバー6人が議論を重ね、それぞれの強みを持ち寄ってイベントをつくる過程そのものが、今回のテーマである「信頼」の実践でもありました。十分に意見を出し合い、互いを信頼して役割を任せたことが、私たちだからこそのこの企画を実現する大きな力になったと考えています。

今回の活動を通じて、科学コミュニケーションとは、科学的に正確な情報を分かりやすく伝えるだけでなく、異なる立場や価値観を持つ人々が問題を一緒に考える「場」をつくることでもあると学びました。科学的な情報だけで全員が同じ結論に至るとは限りません。だからこそ、対話や意思決定プロセスの透明性が重要であることを、視聴者の反応からも実感しました。

「イカがいるのに、なぜ獲れない?」

この問いをきっかけに、科学と社会の間にある複雑な問題について、みなさんが少し立ち止まって考える時間になっていれば幸いです。

なかなか方向性が定まらない議論にも、温かく寄り添い、親身にご指導くださった平川先生をはじめ、CoSTEPの先生方に心から感謝申し上げます。


2日目は23時ごろまで議論し、解散後も寝る間を惜しみ各自作業を進めました。 


メンバー全員の信頼があってこその演習でした!

【訂正とお詫び】イベント中に紹介したスライド「函館市のスルメイカの漁獲高」のデータ元について「独立行政法人 北海道立水産機構」と記しましたが、正しくは「地方独立行政法人 北海道立総合研究機構」の誤りでした。この場をお借りして訂正し、お詫び申し上げます。

本記事は、2026年7月20日(月/祝)に実施した2026年度選科Aオンラインサイエンスイベント「信頼」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。受講生は4グループに分かれ、計4つのイベントを実施しました。他の活動報告も順次公開していきます。ぜひご覧ください。

選科A活動報告「あなたの信頼はどこから? ーこの水、飲めますか」
選科A活動報告「イカらないで!~イカがいるのに、なぜ獲れない?~」(本記事)