1. 立ち上げる9. ラジオ番組制作の実習が決まる
しかし、ラジオ番組制作の実現には大きな障害があった。番組枠の値段である。ならば「いっそのこと北大内にローカルFM局をつくってしまおう。」でも、自前で「北大ラジオ」を立ち上げるとして、それに必要な経費はどのように積算すればよいのだろう。少なくとも1年目は、どこかの放送局に委託するのが現実的ではないか。
こうして翌5月9日、私が企画書を持って、コミュニティFM局の運営を手がける松崎 霜樹 氏、加藤 知美 氏を訪ねることになった。いくらぐらい費用がかかるか、目処をつけるのが目的だった。
私がコミュニティFM局に目をつけたのは、当時札幌で、ラジオカロス札幌というコミュニティFM局が話題になっていたからだ。北海道から多くの自衛隊員がイラクに派遣されていることから、サマーワでの自衛隊の活動を定期的に報道していた。
松崎氏らは、こちらの提案を前向きに受けとめ、有益なアドバイスもくださった。5分や15分という短い番組は、かえって制作が難しい。時間が短いからといって、それに応じて労力が少なくなるわけでもない。むしろ30~60分の枠をとって、その中で密度の変化をつけるほうがよいのではないか。いい部分は、ライブラリ化するなり、他のFM局に流すという手もある。インターネット回線(ISDNで可)があるところなら、ライブ中継もできる。ウエブページと連動させるといいのではないか。各種のイベントもでき、中継放送もできる。編集用の機材も、50万円もあれば揃えられる。誰をターゲットにするか、すなわち放送曜日・時刻をどう設定するか、よく考える必要がある、などなど。
CoSTEPの「ラジオ番組制作」実習は、こうして、コミュニティFM局と連携する形で実施することになった。ラジオ番組のコンテンツは受講生が実習授業のなかで制作する。番組制作の技術的なところは、松崎氏らが運営するNPO法人さっぽろ村コミュニティ工房に委託する。そして三角山放送局の番組として電波に乗せてもらうという体制である。
初年度は予算に余裕があったのでよかったのだが、次第に予算が厳しくなり、松崎氏にはたいへん無理をお願いすることになってしまった。さらに2010年度からは、電波に乗せることを諦め、インターネットを介しての配信(ポッドキャスト)だけにした。