2015 CoSTEP10周年
CoSTEP私史|杉山滋郎

2. 挑む32.
幻のシンポジウム

『鈴木 章 ノーベル化学賞への道』を制作した体験から、電子書籍は科学技術コミュニケーションの強力なツールになりうるのではないかと思うようになった。電子書籍は、手軽に少ない費用で制作でき、無料と割り切れば配布も簡単、内容の改訂もすぐにできる。こうした特徴のうち特に最後の、改訂がすぐできるという点が魅力だと考えた。読者と著者(あるいは読者相互)のやりとりを通して、迅速に内容を改善していくことができる、まさに「双方向的コミュニケーション」のツールではないか、と思ったのだ。

というわけで、例年、修了式の日にあわせて開催してきたシンポジウムで、今年度(2010年度)は「電子書籍の科学技術コミュニケーションにとっての可能性」をテーマにしてはどうかと、スタッフ会議で提案した。検討の末、「どう活かす、電子書籍 ~ウェブメディアで拓く科学技術コミュニケーション~」というタイトルで、3人のゲストをお迎えし、そこに私も加わって議論することになった。電子書籍リーダーの展示会も同時開催する手はずを整えた。日程は3月13日の土曜日。

ところがその2日前、あの東日本大地震が起きた。受講生(特に選科生)やシンポジウムのパネリストの中には、すでに札幌に到着した(あるいは札幌に向かいつつあった)方も少なくなかったのだが、シンポジウムも修了式も開催中止としたⅹⅹⅳ

ⅹⅹⅳ このシンポジウムのパネリストの方々には、予定されていた講演の内容を『科学技術コミュニケーション』第9号に寄稿していただいた。