イベント

137 サイエンスカフェ札幌「ウイスキーと、これからの林業。木遣い感謝いたします~」を開催します

FIN
2024
9/20

今回のサイエンスカフェの舞台は、北大内に一夜だけできるバー。ウイスキーを片手に、木々が織りなす時間の旅に出かけましょう。

ウイスキーは、穀類を原料として糖化、発酵、蒸留を経て、木製の樽の中で長い年月をかけて熟成させたお酒です。この樽での熟成こそが、ウイスキーの香りと味わいを深め、特有の琥珀色を生み出します。

ウイスキーの香りを生む要素には、原材料や蒸留所の立地、蒸留までの各工程に加えて、熟成に使用される樽の種類など、樽熟成の工程の影響が大きいと言われています。特にオーク樽の中では、ココナッツのような熟成香として知られるオークラクトンといった香りの成分が溶出します。他にも、樹木の細胞同士を結び付けているリグニンという物質がゆっくりと分解されてバニリンその他の香り成分が作られ、樽材からウイスキー原酒内へと溶け出していきます。この樽での熟成こそが、ウイスキーの香りと味わいを深め、特有の琥珀色を生み出します。「樽は呼吸する」と言われますが、木がもたらす香り成分の溶出などにより、長い年月をかけてウイスキー原酒はまろやかな香味を獲得していきます。こうして時間をかけて起きた複雑な化学変化こそが樽熟成であり、言うなればウイスキーに独特の香りや琥珀色をもたらす「樽による魔法」なのです。

ウイスキー樽のように、これまであまり意識されていなかった木材の使い道が注目され始めています。木材はバイオマス発電や熱利用のための燃料としても利用されていますし、おがくずはきのこを栽培するためのエサともなっています。様々な形で計画的に木材を使うことは、植える、育てる、伐る、また植える──というような好循環をもたらし、森林の状態を健康に保つことに貢献します。持続可能な林業には、意識的に木を使う「木遣い」が必要なのです。

この特別な夜を通じて、ウイスキーを嗜みつつ、ウイスキーと木材の関わり、そして林業の未来について一緒に考えてみませんか?

この度は、お木遣い感謝いたします。


ゲスト

幸田圭一(こうだ・けいいち)さん
北海道大学大学院農学研究院 准教授

北海道大学 大学院農学研究院 基盤研究部門 林産製造学研究室 准教授。博士(農学)。専門は木材化学。2021年よりリグニン学会理事。2000年、東京大学農学生命科学研究科博士課程を修了。同年北海道大学に赴任。以来、木質バイオマスの化学変換を中心とする教育研究に従事し、2020年より現職。特に、樹木細胞壁成分「リグニン」の有効活用を目指して、新規材料開発に携わっている。また、植物資源を有効活用することを目的として、樹木以外の様々な植物に含まれるリグニンの新規定量技術を提案している。教育面では、木質バイオマスの高度変換技術やパルプ化・製紙に関する学部・大学院講義を担当。ウイスキーをはじめ、様々な切り口から木材の付加価値を考え、その有用性を伝える講演活動をおこなっている。印象に残っているウイスキーは、知る人ぞ知る、東京・有楽町のモルト・バー「キャンベルタウン・ロッホ」で味わったクライヌリッシュ(1973年蒸留)の33年もの。趣味は出張先でのモルト・バーの訪問の他、少し古め(2000年以前)の洋楽鑑賞、幅広いジャンルの読書、囲碁の対局観戦、飼い猫と遊ぶこと、など。

聞き手:CoSTEP 対話の場の創造実習 受講生

今回、ウイスキーの試飲を提供するため、事前申し込み制です(参加費1000円)。定員になりましたので受付を終了いたしました。

日 時:2024年9月20日(金) 18:30~20:00(開場18:00)
場 所:北海道大学遠友学舎
主 催:北海道大学 CoSTEP
定 員:40名(要申し込み、先着順)
参加費:1000円(ウイスキーの試飲・おつまみ付き)

更新日2024.8.21