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「映像で科学を形にする」(12/14)橋本 典久 先生の講義レポート

2020.2.27

小名木 陽子(2019年度 選科/社会人)

今回の講義では、橋本 典久 先生が、ご自身の作品をどのような経緯で、どのようなものを思いつき、どのように作って、その後どうなっていったのかについて紹介されました。

まず、講義の前に先生が訪れた六花亭ギャラリーにて、当時開催中だった青木 野枝さんの個展「ひかりのやま」にて展示されていたパネルに書かれた、青木野枝さんの文章「自分でなにをつくっているのかわからないまま、つくり始めていることがある………」を紹介されました。そして、先生は次のように述べられました。「霧の向こうに何かあるのではと思い突き進んでいくと、ある時、霧がぬけて、むこうに何か面白いものが見えた時、自分の中でこれは面白い、作品として発表してみたいという気持ちが生まれる」。

➀Panorama Ballから広がるアートたち

橋本先生は、自分を取り巻く全天周の光景をフレーミングすることなく記録できないだろうかと、100枚以上の写真をハサミで切ってテープで貼るという試行錯誤の末、ゴミ箱行き寸前、偶然に生み出された作品がPanorama Ball(1996年)という球体写真。そして、そこから別の2つのアート作品へと展開していきます。一つは、Panorama Ballを平面化するという方向へ展開し、地図の正距方位図法と魚眼レンズで生み出した、全天周の光景を平面に収めた円形写真Zerograph(1998年)。もう一つは、Panorama Ballを動画化し、動画表示装置で球体ディスプレイに映し出すPanorama Ball Vision(2007年)。その後、Zerographは、中心と円周を入れ替える動きなども取り入れたMotion zerograph(2008年)へと発展していきました。

次に、これまでの超広角の発想から超高解像度へと視点を移し、life-size(2003年)という昆虫を超高解像度で撮影し、人間大にして展示するという作品が誕生しました。そこから、それらをデータベース化し、博物館等で鑑賞できるZooMuSee(2007年)という作品としても鑑賞できるようになりました。インターネット上でも、橋本先生のページから一日一虫という日替わり方式でデータベースが提供されています。

②時間について考えた

その後、橋本先生が取り組んだテーマは、「時間について」。映画は独立した静止したコマから構成されるが、このコマ全てをトランプのように積み重ね、中心で半分にし、その断面図を真横から見てみるというアート、Breath(2010年)が誕生しました。そこからは映画の時間にこめた監督の息づかいが見えてきたとのことです。

では、小説からは何が見えるのだろうか、ストーリーとは別の印象がどこからくるのか可視化する方法はあるのだろうか、という思いから、句読点で改行→ひらがなに変える→中揃えにし、それを1ポイントの文字をレーザーで刻み、ルーペで見ることができるという手法によって、作者のリズムを音の波形のように可視化した作品がVoice(2011年)。

これら、先生の作品にまつわるエピソードから、新発想で物事にアプローチすること、模索する中で思いがけず発見し、展開していくことの面白さを感じました。
ZooMuSeeの日替わり今日の虫はこちら(http://today.zoomusee.net/)です。