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「ファシリテーション本質とテクニック」/627 長尾彰先生の講義レポート

2012.7.3

モジュール3「表現とコミュニケーションの技法」の第二回目の講義は,長尾彰先生を講師としてお迎えしました。長尾先生は,ナガオ考務店やエデュケーショナル・センターで,チームビルディングの研修を専門に活動されています。さらに,一般社団法人プロジェクト結コンソーシアムでは理事長として,被災地のコミュニケーションビルディングにも力を入れていらっしゃいます。また,ラフティング女子とバスケットボール男子ユースの日本代表のコーチも務められるなど,多岐にわたってご活躍されている先生です。

今回は,そんな長尾先生に「ファシリテーションの本質とテクニック」というタイトルで,講義をしていただきました。受講者は三人ずつのグループに分かれ,数回の話し合いと発表を行い,参加型の講義となりました。
ファシリテーターとは
長尾先生の考えるファシリテーターとは,支援・促進する人なのだそうです。相手を支えて応援し,促して進めることが仕事だとお話してくれました。出会ったばかりのグループをチームに変えること,そして,目標を達成するお手伝いをすることが重要なのです。では,グループとチームは,何が違うのでしょうか。
チームの発達段階:グループからチームへ
複数の人が出会ったばかりの状態を,グループと言います。グループには,目標も目的もありません。一方,チームには,目標や目的があります。また,自発的なリーダーが存在します。グループからチームへは,以下に述べる発達段階を経て変化していきます。
チームの発達段階には,形成期,混乱期,規範期,達成期の四つがあります。形成期はお互いに出会ったばかりで,誰かが何とかしてくれるという他力本願な状態です。混乱期には,お互いに本音で話せるようになり,対立や衝突が生まれます。ここまでが,グループと呼ばれます。混乱期を乗り越えると,グループからチームへと変化し,規範期となります。この時期になると,チームのメンバーで役割やルール,目標を決め始めます。次に,目標の達成や結果を残す,達成期となります。この時期には,このチームなら何でもできるという結束力が生まれています。
ファシリテーターの役割
ファシリテーターは,こうしたチームの発達段階を見極め,それぞれの段階にあった関わり方をしなければなりません。形成期には,具体的な指示を出す必要があります。混乱期には,メンバーに今起きていることを客観的に伝え,フィードバックを行います。規範期には,たくさんの問いかけをし,メンバーに考えるきっかけを与えます。達成期では,黒子に徹し,メンバーに全てを委ねます。

状況に応じて様々な役割をこなすファシリテーターですが,「強制」と「矯正」をすることはありません。無理矢理何かをやらせたり,あるべき形に押し込んだりということはしないのです。長尾先生曰く,ファシリテーターを漢字で言い換えると「世話人」になるのだそうです。ファシリテーターと言うと,最近できたもののように感じるかもしれません。しかし,古くからある世話人という言葉で表せるファシリテーターは,実は昔からある考え方なのかもしれません。
今回の講義では,ファシリテーターの役割と,チーム作りの原理原則を学びました。今後科学技術コミュニケーターとして活動していく際に,今回の講義で学んだフレームワークは,大いに役立つと確信しています。
西野 明理沙 (2012年度CoSTEP本科生)