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選科A活動報告「正しさだけでいいんすか? ~ネット番組から考えるサイエンスコミュニケーション~」

2025.9.11

グループ名:セントロ
メンバー:藤岡、秋田、清野、森、光永、高松

(作成 のりこ)

目的と達成目標

新たな行動様式が社会に受け入れられるには、「科学的根拠がある」だけでは不十分です。本イベントでは、科学的正しさだけでは届かない場面で、サイエンスコミュニケーターに何ができるのかを参加者に考えてもらうことを目的としました。

工夫と意図

「科学を伝える人」を対象に、架空の未来「2029年」を舞台にしたネット討論番組と、その振り返りYouTubeチャンネルの2部構成としました。討論だけでは「サイエンスコミュニケーターとして何ができるか」という本質的な問いが十分に伝わらない恐れがあり、YouTubeライブで討論を整理し別視点から振り返ることで、視聴者に考えを深めてもらう構成にしました。

構成と内容

第1部:討論番組「CoSTEP TV」

「日傘義務化法案」が審議されている近未来という架空の設定のもと、科学的根拠に基づく新たな行動様式をめぐり、MC、専門家、インフルエンサー、政治家が賛否の立場から議論することで、エビデンスがあっても行動変容が進まない現実を浮き彫りにしました。

(ネット討論番組の動画を作成)

第2部:振り返り番組「ちいしおチャンネル」

討論番組を視聴した2人のYouTuberが、視聴者であるサイエンスコミュニケーターに向けて問いかけることで、視点を整理・深掘りする構成です。視聴者とともに考えるスタイルをとりました。

(炎上をサイエンスコミュニケーターが振り返るメタ視点をとりこみました)

準備の裏側

20分のオンラインイベントを、実質2日間でゼロから作り上げました。当初、「アンチエイジング」を軸としたアイデアを構想しましたが、議論を重ねる中で、テーマは「新しい行動様式の受容過程」へと大きく舵を切りました。急な方針転換にもかかわらず、全員で意見を出し合い、試行錯誤しながら「伝えたいこと」と「そのための手法」を明確にしていった過程は、この演習の大きな学びの一つとなりました。

(時というテーマから、アンチエイジング、そして最終的にはアンチエイジングの先にあるジェンダー問題と日傘というテーマにたどり着きました)

【メンバーの役割】

もり(MC役)、清ちゃん(専門家役)、のりこ(議員役)、

HIROSHI(インフルエンサー役)、ちーたか(学生役)、しお(会社員役)

それぞれシナリオ作成、動画編集、スライド作成等を分担しました。

アンケート結果

28名の方に回答いただきました。「架空のネット番組での討論は、科学についての多様な意見を可視化できたか」という質問に対し、「部分的には可視化できた」という回答を最も多くいただきました。

「科学的エビデンスだけでは人は動かない」ということについては、7割弱が新たな気づきではなかったと回答。科学を伝える活動に関係している人は、科学を伝えるには、他の要素(感情、価値観、信頼など)も重要だと認識していることが確認できました。

イベント全体に対するご意見・感想

参加者からは「2部構成になっており、流れがスムーズで伝えたいことがわかりやすかった。構成のギャップがあってよい」「最初、欠如モデルゴリゴリの討論でどうなるかと思ったが、後半いい意味で『あざとく』まとめて双方向コミュニケーションに持って行ったのはお見事!」等のコメントが寄せられました。

伝えたいことは伝わったか?

事前に収録した討論番組を流す第1部と、その内容を踏まえてYouTubeライブの視聴者にサイエンスコミュニケーションの方法を問いかける第2部、という構成にしたため、視聴者に「相手を説得する時にどうするべきかを考えるきっかけ」を提供でき、チームが意図した「相手にどう伝えるか、どう行動につなげてもらうかを考える大切さ」を伝えられました。

各メンバーの学び

もり:背景の異なるはじめましての人たちと何かをつくるための「コミュニケーション」のプロセスにも学びが多いと感じました。

清ちゃん:期間中「科学技術コミュニケーションとは何か」という問いそのものに立ち返る機会が何度となくあり、その問いを繰り返しながら作業が進められました。

HIROSHI:チームのメンバー全員の考えや意見を同じ方向に向けることの大切さを改めて学びました。

ちーたか:それぞれの得意分野を生かし1つのイベントを作り上げる面白さを体感しました。

のりこ:協働活動には人と人をつなぐこころのコミュニケーションが不可欠。

しお:明確なコンセプト設定が何よりも重要。

おわりに

時間とリソースが限られる中、メンバーそれぞれの役割と工夫が結集し、無事に企画を形にすることができました。奥本先生をはじめとするCoSTEPスタッフの皆様に、心より感謝申し上げます。

本記事は、2025年7月21日(月/祝)に実施した2025年 選科Aオンラインサイエンスイベント「時」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。24人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。以下のリンクより、ご覧いただけます。他の活動報告も順次公開していきます。ぜひご覧ください。

・選科A活動報告「ラブラブカップルに水をさすな!?」
・選科A活動報告「正しさだけでいいんすか? ~ネット番組から考えるサイエンスコミュニケーション ~」(本記事)
・選科A活動報告「タイムセール ~時間、買いませんか?~」
・選科A活動報告「激論!投票直前スペシャル!!~あなたの一票で時が止まる?~」