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「理科教育の立場から見た科学技術コミュニケーション」12/7 境智洋先生の講義レポート

2013.12.21

北海道教育大学釧路校の境智洋(さかい ちひろ)さんは、実験名人を投票によって決めるイベント「科学の鉄人」に2005年、2006年連続で選ばれた筋金入りの実験ショーの達人。講義は、そんな境先生の石や地学についての体験型の実験から始まりました。

「火打ち石って使ったことあります?」軽妙なトークで受講生たちと会話しながら、いつの間にか始まった実験ショー。いつもの講義と違うけど、何かとてもわくわくする。受講生たちの顔に自然と笑みが浮かびます。

どんな石が火打ち石になるのでしょうか?花崗岩、水晶、チャート、泥岩。実は、鋼(はがね)と石をぶつければ、泥岩以外のたいていの石は、火花が散ります。つまり硬い石と鋼をぶつければ、火花が起きるのです。境先生は、実際に火花をガーゼに落として、種火を作る様子を見せてくださいました。受講生から歓声が上がります。

石を叩いて良い音を鳴らす実験では、受講生の本間真佐人さんとまるで漫才のような掛け合いでテンポ良く進みます。この日が初対面とは思えない2人の絶妙なコンビネーション。石を木琴みたいな楽器にして、本間さんが童謡「カエルの合唱」を即興で演奏します。実は、讃岐岩(さぬきがん、サヌカイト)という石は高く澄んだ音がするので、本当に石琴という楽器に使われているそうです。

今度は、全ての受講生に石を配って、見た目、匂いや手触りで石を見分けるなど参加・体験型の授業が続きます。バスマットを使って山のでき方を再現する実験は見事でした。バスマット一つ一つを、海の底にたまった土に見立てます。本間さんと2人でどんどん積み上げていくと、まるで地層のように縞模様ができます。「地球のパワーで!」という掛け声のもと、2人で両側から押します。硬くてなかなか曲がりませんでしたが、先生の「1億年!!」という叫び声でぐにゃりと曲がって、褶曲した地層が再現され、受講生たちに大受けでした。

このように実験や体験をふんだんに交えて受講生を巻き込んだ参加型の授業によって、楽しく地学を学ぶことができました。見逃せないのは、まるで実験ショーのような授業の中に、プレゼンテーション、ファシリテーション、飽きさせないための実験や体験型プログラムの設計など、科学技術コミュニケーションとして学ぶべき要素が凝縮されていることです。後半では、そうした境先生のイベント設計や実験開発の極意について、映像も使って詳細にレクチャーしていただきました。

サイエンスショーには、イベント制作や理科の授業に応用できるたくさんのノウハウが詰まっています。構成力、実験選択力、実験開発力、伝達力、対応力、演出力、キャスティング力、広報力、連携力。こうしたノウハウについて詳しく記した「サイエンスショーをつくろう!」という自作の教材も配ってくださいました。

境先生はサイエンスショーを、北海道教育大学の学生たち自らに企画させることで、こうした科学技術コミュニケーションのスキルを実践的に身につけさせています。その教え子がまた新たに「科学の鉄人」に選ばれるなど、実験ショーの世界で大活躍しています。

今回はこの授業のためにたくさんの実験道具を釧路から運んできてくださいました。おかげで実体験によってとても理解が深まりました。境先生、素敵な授業を本当にありがとうございました。