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「学際国際産学連携によるオープンイノベーション」1/11 仙石慎太郎先生の講義レポート

2014.1.21

仙石慎太郎先生が所属する、京都大学・物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は、ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥先生も所属することで有名です。国際化に力点を置いて研究を改革しようという、日本に9拠点ある「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)の一つであり、iPS細胞の研究だけでなく、物質−細胞統合科学という新しい研究領域を切り開いています。

大きなミッションを掲げ、第一級の研究者たちが集まった複雑な組織であるため、どのように組織を経営すれば、最高のパフォーマンスが得られるかというのは大きな課題です。iCeMSはWPIの中でも、2つの人文・社会科学の領域を擁する、非常にユニークかつ先進的な研究組織です。iCeMSでは、仙石先生が所属するイノベーションマネージメントグループと、10月5日に講義に来ていただいた加藤和人先生が主宰する科学コミュニケーショングループという2つの組織が存在して、研究組織全体のマネジメントに取り組んでいます。

今回は、仙石先生たちのイノベーションマネージメントグループが、どのようにして「学際(Interdisciplinary)・国際(International)・産学公(Industrial)」の3つの連携(3つのI)を生み出そうとしているのか、その設計に関するお話をしていただきました。3つとも重要な取り組みですが、これまで日本の大学ではそれぞれ縦割りでバラバラの取り組みになってしまいがちでした。仙石先生は専門である技術経営の視点から、まずは研究者個々人の動きを深く観察することから始めたそうです。

まずは学際連携に関する話からです。膨大なデータを分析する中で、いくつか興味深い結果も出ました。どのようなミーテイング方法や種類が、学際的な論文の生産性に関係しているかということを統計的に示した研究では、期待されていたような国際会議やシンポジウム、セミナーよりも、それ以外の意図しないコミュニケーションの機会の方が、学際的な研究のアウトプットに貢献しているという結果が出ました。

他にもアクションアイテム、つまり次の着地点やステップをはっきりさせないようなミーティングの方が、意外と学際的な研究の役に立っていたりと、予想外のデータが次々に出されました。教授会は、はっきり学際性に対してはネガティブに効いてくることも判明したそうで、この結果には研究者の皆さんも苦笑されるとか。

そして研究室のグループ内調査では、自分の研究室のトップ(教授)や准教授などと議論する機会がとても少ないということがわかりました。グループ内で「ハッピアワー(隔週開催のカジュアルな会)」や「合同グループ・ミーティング」といったコミュニケーション機会を多く作ることがとても大事であると、仙石先生はいいます。

このように、定量的なデータをもとに、研究環境を少しずつ改善していくことで、大きな学際融合の成果につなげることができます。そして、こうした取り組みをPDCAサイクルに落としこんで、粘り強く繰り返していくことも重要だと強調されていました。

仙石先生はこのように、これまで経験則に頼りがちだったイノベーションの世界に科学的なアプローチを導入し、実践への持続的なサイクルを生み出すために尽力されています。講義では、上記の学際連携の話に続いて、国際連携と産学公連携についても具体的な例を元に、たいへん刺激的なレクチャーが行われました。またCoSTEPの受講生に何度も質問を促して、インタラクティブな空気を作って講義を進めてくださいました。仙石先生、本当にありがとうございました。