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「参加と対話の科学技術コミュニケーション」524日三上直之先生の講義レポート

2014.5.31

レポート:神田あかり(2014年度本科・理学院修士1年)

今回の講師は三上直之先生(高等教育推進機構 准教授)です。三上先生の専門分野「科学技術への市民参加」について様々な事例を紹介しながら、解説してくださいました。

「ふつうの人びと」の考えはどうすれば聞き取れるだろう

遺伝子組換え作物や原発など、科学技術をめぐって社会的な対立の生じる問題は数多くあります。これらは、普段その問題に興味を持っていないような私たち「ふつうの人びと」にも関わりがある問題。ですから、これらをどうするのかは、「みんなで」決めなくてはなりません。

これまで都市計画などの分野では、「みんなで」決める方法が研究されてきました。しかし、すでに高い関心を持っている人々の意見が中心になりがちで、「ふつうの人びと」の意見が聞こえてこない、という難しい課題が残っています。この課題に挑む試みの一つが「討論型世論調査」です。

「ふつうの人びと」から専門家に問い、考える

「討論型世論調査」は無作為に選び、「ふつうの人びと」の縮図(ミニパブリック)になるように集めた参加者が主役です。参加者には様々な情報を考え合わせ、じっくり時間をかけて話し合い、時には専門家に説明を求めて、意見をまとめてもらいます。「討論型世論調査」は、原発事故を受けて国のエネルギー戦略を考え直す際にもおこなわれました。この時は、話し合いを通して2030年に原発をゼロにすべきだという意見が増え、結果は専門家による会合の資料となり、政府の戦略に反映されました。

社会に浸透する科学、そして政治の問題へ

市民参加の議論においては、話し合いの結果がその後どのように用いられるかをあらかじめ明確にし、参加者にも伝えておくことが、信頼を保つための大事なポイントとなります。結果の活用法の他にも、参加者が触れる情報に偏りがないか、情報提供してもらう専門家の人選など、企画側が慎重に決めなくてはいけない点があります。この調整が、科学技術コミュニケーションの活躍どころです。エネルギー戦略についての今回の例は、政権が変わったことで結果の効力をほとんど失ってしまうという問題を示すことにもなってしまいました。

科学に関わる社会問題は、政治の問題にもなってきます。開講式で「扱うものが多様で、定義できない」と言われた科学コミュニケーションの幅広さと深さを、改めて知ることのできる講義でした。