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「環境教育持続可能な社会を目指すコミュニケーション〜」7/19 増田直広先生の講義レポート

2014.7.26

■キープ協会と環境教育

今回は、山梨県・清里高原にある公益財団法人・キープ協会(KEEP)から、増田直広さんが来てくださいました。キープ協会は、八ヶ岳の麓にあり、やまねミュージアムや山梨県立八ヶ岳自然ふれあいセンター等、様々な施設を運営しています。

また恵まれた自然環境を活かし、多くの環境教育事業を1983年から行っています。増田さんは環境教育のエキスパート。パソコンをほとんど使わずに、巧みな話術で受講生を惹きつけます。

■1枚の不思議な写真から

まずは不思議な写真を見せて、何が写っているのかと尋ねます。ゴリラ?古墳?宇宙人?一度、思い込んだらどうしてもそう見えてきてしまいます。ネタバレになるので、これ以上詳しく紹介しませんが、解像度を高めてみると、普通のスナップ写真でした。

「持続可能な社会」「自然を大事にしよう」といった言葉をいつも自分たちは当たり前のように使っているが、本当に伝わっているのか?自分たちの当たり前は、誰にとっても当たり前なのだろうか?1枚の写真をもとに、前提を疑うところから始めようと増田さんは言います。

■紙芝居プレゼンテーション法

人に伝える方法としてアナログも有効ということで、今回はパソコンを使わず紙芝居プレゼンテーション(KP法)で講義をしてくださいました。増田先生は、環境教育について受講生と双方向のやりとりをしながら、手書きのキーワードをテンポ良くホワイトボードに貼り付けていきます。内容もさることながら、こうしたコミュニケーションの手法にも学ぶところが多かったです。

■インタープリテーションとは?

インタープリターは見えるものを通して意味や価値、つながりを伝えるという「翻訳者」のことです。今回はTracksというアメリカの環境教育のプログラムを通して、インタープリターの疑似体験をさせていただきました。

アメリカのとある所で1億年ほど前の地層から見つかったという、2種類の足あとの化石。最初は次第に接近していき、次第に重なってもみ合いになった形跡があり、その後は1頭になって歩いて立ち去っています。ここに秘められたストーリーを読み解こうというものです。

求愛中のオスをメスが受け入れた、あるいは捕食者との攻防ではないかとか、果てはスキップした後、片方が相手を肩車して2頭でどこかへ消え去った説など、奇想天外な発想に教室が笑いに包まれました。

実はこの化石を読み解く作業に正解はありません。というより全てに正解の可能性があるそうです。このプログラムを通じて、インタープリターの仕事を疑似体験することができました。

■インタープリテーションの公式

インタープリターと、科学技術と人を橋渡しする科学技術コミュニケーターにはかなり共通点がありそうです。増田さんは以下のようなインタープリテーション(IP)の公式を紹介してくれました。

IPの成果=(“人を知る”+“資源を知る”)ד技術を知る”

まずは、対象者であったり自分であったり、人を知ること。

そして資源というのは、題材や材料のこと。増田さんの場合は清里の自然であり、私達の場合は科学技術ということになります。

それらを足したものに、技術を知ることを掛けます。技術とは、講義形式で伝えるのか、それともワークショップ形式なのか、あるいは道具を作るのかといったテクニカルな部分のことです。

■”持続可能な社会”を言い換えてみよう

増田さんは持続可能な社会を作りたくて環境教育の仕事を続けているそうです。増田さんなりに人に伝わる表現で言い換えると、「誰にとっても平和な社会」です。最後に、“持続可能な社会”を別の言葉で表現するとどうなるか、受講生たちが自分なりに考えてみることで締めくくりました。

「無理をせずに続けていけることができる仕組みがある社会」「未来を夢見ることができる社会」「100年後も今のバランスが保てている社会」等、たくさんの意見が出ました。

改めて、科学技術コミュニケーターの役割や、伝わる言葉の使い方について考える良いきっかけとなりました。増田さん、ありがとうございました。