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「初等中等教育の多様なステークホルダーを理解する」11/22 寺西隆行先生の講義レポート

2014.12.22
今回の講義では、株式会社Z会 教材編集部理科課の寺西隆行先生にお話しいただきました。テーマは「初等・中等教育の多様なステークホルダーを理解する」です。
多様な人同士をつなげることで、新たな価値を創出してきたという寺西先生。広報コミュニケーション分野でのご自身の経験から、人と人とをつなげることで生まれる価値と、その実践法についてお話をいただきました。そこには、「どうやってやるか」の技術論に留まらない、寺西さんの哲学がありました。
人と人との関係性が、PR活動につながる
人をつなげることで生まれる価値。それは「PR活動につなげることができる」というものです。
例として、科学嫌いのAさんに科学を好きになってもらうためのPR活動にはどのようなものがあるか、考えてみましょう。科学好きなBさんに、科学の魅力を存分に語ってもらう?もちろんそれも大事ですが、世の中にはごり押しの「宣伝」を嫌う人もいるので、そういった層には魅力は伝わりません。
寺西先生の提案する解決策の一つは、「科学にそれほど深く関わっているわけではない、けれどもAさんの知り合いであるCさんに、『科学、面白いよ』と言ってもらう」ことです。ここで大事なのは、AさんとCさんの間に関係性があるという点です。このときAさんは、「Cさんが言うのなら、科学って面白いのかもしれない」と興味を持ってくれるかもしれません。
そもそもPRとは Public Relationsの略であり、人同士の関係性(Relations)がないとPR活動はうまく機能しません。宣伝だけでは、伝わらないことが多いのです。まずは関係性を築く持つことが大事です。相手との関係性をを持つ築くと、こんどはその相手が人が誰か別の人に話したくなります。それが重なると、話がどんどん伝播します。こうして、PR、関係性が広まっていくのです。
相手の役に立とうとすることが、人とつながるための第一歩
では、関係性を築き、強くしていくためにはどうすればよいのでしょう?寺西先生は、相手の役に立つことをするのが第一であると言います。誰かと関係性を持つためには、自分を受け入れてもらわなければなりません。そのためには、相手のことをよく調べ、知ることが重要有効です。そうしたうえで相手の役に立とうとして接すると、相手は心を開いてくれるのです。そこから、新たな関係性が生まれます。
他にも、相手に需要のある自分の強みを活かす、相手の想像している自分とはズレた自分を出し、いい意味で相手を裏切る、相手の喜びそうなサプライズを演出するなど、様々な実践法を学びました教えて頂きました。どれも「相手側の事情」をよく考え、相手の役に立ちたい、喜ばせたいという思いから始まる方法なのだと思います。
なぜ、つなげるか
こうした技術を用いれば、ある程度は関係性を築けるかもしれません。けれども寺西先生は、どうつなぐかという「やり方」の前に、なぜつなげるかという「あり方」が大事であるといいます。そこがしっかりしていないと、つなげた関係性が十分に機能しませんし、そもそもつなぐという行動に移れないという結果にもなり得るからです。
寺西先生の場合、人と人とをつなげるという活動の根底には、人間は社会の中の関係性に支えられて生かされている、他人とつながれることが個人の幸せを生むという、ご自身がこれまでの人生の中で学んだことが息考え方が根本にあります。づいています。だから、人と人をつなげることで誰かに幸せになってもらいたい。その役割を自身のレゾンデートル(存在意義)として掲げ、寺西先生は日々、人と人とをつないでいます。
科学技術コミュニケーションにどう生かすか
先ほどの科学嫌いのAさんのことを、もう一度考えてみましょう。あなたは、Aさんの科学嫌いな気持ちや、その理由を考えようとしたでしょうか?Aさんが前提として持っている、科学に関する知識範囲を知ろうとしたでしょうか?Aさんの事情や立場をよく考えれば、ごり押しの「宣伝」活動がAさんに届かない場合もある、ということが容易に想像できるでしょう。相手側の事情に寄り添うということについて、より深く一層考えていく必要がありそうです。
そして、「やり方」の前に大切な「あり方」について。CoSTEPの受講生である私たちは、どういった「あり方」を胸に科学技術コミュニケーションを実践していけばよいのでしょうか。おそらくそこに正解はありません。受講生それぞれが、自身のこれからの「あり方」に思いを馳せる、そんな機会を提供していただいたくれる講義となりました。
寺西先生、ありがとうございました。
田中泰生(2014年度CoSTEP本科/農学院修士1年)