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「デザインというプロセスを通した科学コミュニケーション可能性」7/11大津珠子先生の講義レポート

2015.7.17

レポート:小坂有史(2015年度選科 研究補助員)

今回の講義では、大学院在籍中から筑波研究学園都市でフリーランスで仕事をしてこられた大津珠子先生が「デザインというプロセスを通した科学技術コミュニケーション」というテーマで話してくださいました。

グラフィックデザインとは何か?

講義の冒頭で、京都市の高山寺に伝わる国宝の絵巻物、鳥獣人物戯画を見せてくださいました。そして「時代や国、環境、言葉が違っても変わらない価値観を、多くの人と共有しようとする行為がグラフィックデザインであり、鳥獣人物戯画が示しているメッセージではないか」といお話で講義が始まりました。

科学コミュニケーションとデザイン

情報には、機能主義的な側面を持つ「ケ性」と、記号主義的な側面をもつ「ハレ性」があり、両者のバランスがとても重要となります。

科学技術に関しては、専門家同士で情報を伝えあう学術論文が「ケ性」、国民との対話である科学技術コミュニケーションは「ハレ性」的メッセージを持つと言えます。後者を担う科学技術コミュニケーターは、科学者とは異なる視点で情報をとらえ、その質を高める必要があります。そしてグラフィックデザインには、これら情報の質を視覚的にコントロールする大切な役割があるのです。

グラフィックデザインを構成する5つの要素

グラフィックデザインを考えるとき、大津先生は5つの「S」を大切にしているそうです。

①Simplicity:無駄を省いて人々の記憶に残そう

②Style        :デザインの基本や歴史的に蓄積されてきた形式を尊重しよう

③Sensitivity:地球上で起きている事象にアンテナを張ろう

④Surprise :受け手の好奇心を刺激しよう

⑤Sympathy :受け手の共感を得よう

中でも、⑤Sympathyは広報のためのデザインの最大の目標です。デザインを通して人々の共感を得るために、最も大切なことは何なのでしょうか。

グラフィックデザインに大切な事とは

スクリーンに1枚のピザの写真が映し出されました。トマトの赤、モッツァレラチーズの白、バジルの緑・・・そう、ピッツァマルゲリータです。これは、マルゲリータ王妃に献上され彼女の名前が付けられたピザです。イタリアの国旗をイメージし王妃への忠誠心を表現したデザインであると言われているそうです。

全てのデザインには理由があり、ストーリーがあります。最も大切なことは、最低限の決まりを守り、誠意をもってデザインする事だと大津先生は教えてくれました。

講義の中では、これまでCoSTEPが実践してきたワークショップやサイエンス・カフェ札幌の広報等、数々の実例が紹介されました。1枚1枚のデザインがもつ美しさに感動しつつも、そこに込められた作り手の意図についてのお話にも心を動かされました。

デザインの重要性を理解し、今後も実際の科学技術コミュニケーション活動に活かしていきたいと思います。

大津先生、ありがとうございました。