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「わける事とつなげるデータから見える「科学技術コミュニケーション」とその実際」10/15 川本思心先生の講義レポート

2016.10.19

松永陽子(2016年度選科A/社会人)

「わける事とつなげる事~データから見える「科学技術コミュニケーション」とその実際」と題し、川本思心先生から数量化できる現実の理解方法について、お話いただきました。

現実世界を理解する手段のひとつとしてのデータ

今回扱う“データ”とは「統計等の数字であり、表・グラフ化されるもの」です。統計データ化することは「現実世界の一部を切り出し表現すること」であり、漠然とした現実の理解を支援します。例えば、ある問題に対する世間の考えを数値化すると世論調査結果になります。

もしあなたが何かの調査を行うなら

調査目的に応じた調査対象、調査・分析方法(アンケート等の大規模調査、グループインタビュー(談話分析)、個人へのヒアリング、ビッグデータ分析)を検討することが大切です。数値化された結果は現実を正確に表しているとは限りません。解釈によって現実が歪んでしまうこともあることを念頭に、データ結果を左右しうる様々な前提条件についても整理が必要です。

もしあなたが調査結果を誰かに伝えるなら

“現実”から“事実”を切り出し“データ”と成し、解釈を加えて“情報”を作ります。コミュニケーション時に他データとの比較および図表の活用が大いに有用ですが、整理・表現方法がデータの元の“現実”に歪みを与えないか、前提条件と矛盾していないかについて検討が必要です。

データに基づく科学技術コミュニケーションの設計

調査の結果、社会的な意識と科学への意識の度合いによって科学技術への興味度・科学イベントへの参加者構成が変わること、研究者・市民間や文化的背景の違う国間では科学技術情報への理解・考え方に差があることがわかっています。これらのデータは、イベントの企画・設計の参考となるでしょう。

データの中には見えない“現実”

一方、コミュニケーションにおいてはデータが問題を複雑化することもあります。特に遺伝子組換え作物等を題材とする場合には、リスクの大小というデータではなく、市民が問題へ関与・選択する権利を侵害されたと感じることが対立構造を産んでいます。

最初に述べた通り、データ化できることは現実世界の一部のみです。どのようにデータを取得し、関連付けるかにより、理解できる“現実”の形が異なります。問題の本質がデータとして挙がってこないことも多々あります。あくまでもデータは現実を理解する1つのツールです。用法・用量を考え活用していきましょう。

CoSTEPの楽しさも、データでは伝えられない現実の一部ですね。川本先生、ありがとうございました。