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「マーケティングコミュニケーション学ぶ、サイエンスコミュニケーション」(9/29)本間充先生の講義レポート

2018.10.4

下條 朝也(2018年度 選科B/学生)

今回の講義では、多くのマーケティング経験を持つ本間充先生(アウトブレインジャパン 顧問/アビームコンサルティング 顧問)が、メディアとマーケティングとの、そしてサイエンス・コミュニケーションとの関係性について講義しました。

マーケティングとはなにか

マーケティングとは、「困っている人に対して、適切な商品・サービスの情報を与え、マッチングさせること」です。本間先生曰く、アニメ「サザエさん」に登場する三河屋のサブちゃんは、顧客(サザエさん宅)の過去の購入履歴をもとに、次に「いつ」「どのような」物品を欲するかを予測し提供する、いわゆるCRM(Customer Relationship Management)を行っているのだそうです。

マスメディアの変化

マーケティングでは、主にマスメディアを用いた広告が行われてきました。しかし近年、インターネットの登場により、4大マスメディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の影響力が相対的に低下しているという調査があります。このような変化を背景に、マーケティングを捉え直すために、従来のメディアが3つの概念に基づいて再整理されました。

ひとつは、告知を目的とした「Paid Media」です。その特徴として、細やかなターゲティングが可能な反面、リーチが短いというデメリットを持ちます。次は「Owned Media」です。自社HPなど、誰もが参入可能なメディアですが、質が低いものが多く、未だ読者が少ない傾向にあるそうです。最後が、ユーザから信頼や評判を得ることを目的とした「Earned Media」です。これは、主にSNSを指します。現在は、これら3つのメディアを有効に活用したコミュニケーションを構築する必要があります。

メディアとサイエンス・コミュニケーション

インターネットの影響力が大きくなるほど、情報の送り手から情報を届けるというコミュニケーションだけでなく、受け手が自ら情報を求め探すというコミュニケーションの機会が増えてきます。そのため、従来の「誰に(Target)」「何を(What to say)」「どのように(How to say)」届けるかを考えるだけでなく、受け手が「何を欲しているのか」「なぜ欲しているのか」を予測して情報を提供する必要が生まれます。

これはビジネスにおけるコミュニケーションだけでなく、サイエンスの文脈にも当てはまります。たとえば、「受け手がインターネットで検索する際、どのような単語を用いるか」を意識せず、科学的文脈における正しさに基づく形で命名してしまっては浸透しづらいため、市民にとって親しみ深い単語に置き換えて広報すべきだと本間先生はいいます。

サイエンス・コミュニケーターの役割

本間先生の話を聞いて、科学はビジネスと異なり、専門家ではない人たちに伝える意識が弱かったのではないかと思いました。しかし、IoTや機械学習などに代表されるように、その流れは昨今のITビジネスにも見られ、専門家と市民(顧客)の知識差の開きが大きくなっているように感じます。たしかに、専門家が市民に親しみのあるネーミングをしたり、内容を単純に説明したりすることは望ましいですが、厳密な定義に基づくネーミングや説明は、専門家にとって欠かせないものです。

そのため、科学・技術と市民を繋ぐために、サイエンス・コミュニケーターの存在が必要となります。科学的な言葉を噛み砕き、わかりやすい語を採用して市民の認知度を高めることで、インターネット検索を通じた自発的な情報収集を促すことができるのだと思います。

本間先生、ありがとうございました。