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「科学技術コミュニケーションのための情報と計画」(9/19)奥本素子先生の講義レポート

2018.9.26

春日 遥(2018年度 本科/学生)

夏休み明けの講義は、CoSTEP特任准教授の奥本素子先生の「科学技術コミュニケーションのための情報と計画」から始まりました。胆振東部震災の影響でCoSTEPの授業も延期になっており、久しぶりに再会する受講生もいました。

考えるより調べよう

奥本先生の授業は「考えないで」という言葉とともに始まりました。今回の授業のポイントは、「何を科学技術コミュニケーション活動の立案時に分析しなければならないか」というものです。科学技術コミュニケーション活動はコミュニケーションの目的・対象があってこそ始まるもの。まずは、現状の課題を把握し何がどうなってほしいのかを分析する「ニーズ分析」から活動立案は始まります。「何が現状の問題?知識不足?信頼不足?交流不足?問題の捉え方の違い?」「そもそも◯◯を教える必要はあるの?」「対象者にはコミュニケーションの結果どうなって欲しいの?」「科学者の味方になって欲しいの?」「科学者の味方にならなくても良いから話を聞いてほしいの?」

私にとって意外なことに、対象となる相手の前提知識や学習スタイルを把握する「対象者分析」は分析の最後の方でした。CoSTEPの私の実習班で企画するようなイベントでは初めから対象者が決まっていることが多く、「対象者分析」は初動段階で行うものだと思っていました。しかし、実際にはニーズ分析で「何が問題か」が分かった後に「誰がどう変われば良いのか」という分析が始まり、その「誰」のことを分析し始めます。

科学コミュニケーションの段階

これまでのCoSTEPの授業でたびたび悪いコミュニケーション例として度々触れられてきた「欠如モデル」ですが、専門家が一方的に教えるようなコミュニケーションも、知識を伝えるような場面で有効な場合はあるそうです。問題は、欠如モデル以外のやり方が広まっていないことだそうです。

科学コミュニケーションにも段階があり、

  1. 専門家が知識を伝えるPUS(Public Understanding of Science)
  2. 受け手に何かしらの動機付けなど科学に対する認識を変えるPAS(Public Awareness of Science)
  3. 専門家が特定の対象グループや公衆代表者と双方向の交渉や対象グループを巻き込んだ意思決定を行うPES(Public Engagement with Science)
  4. 異文化理解などを目的として、PESに加えて他分野の専門家も巻き込んで対話を行うようなPPS(Public Participation in Science)

ニーズにより、どの段階のコミュニケーションが必要なのかも変わってきます。知識不足が問題なら、欠如モデルであるPUSも有効でしょう。信頼が不足しているなら、PASやPESが有効でしょう。授業内で挙げられた例としては、「似非科学」の問題を伝える際のこと。PUSとして「これが正しい考え方です」と知識を伝えるのではなく、「1つの薬ができるまでに製薬会社がどれだけのステップを踏んでいるか」を説明するようなPASのコミュニケーションの方が効果的に対象者に訴えかけることができるかもしれません。

受講生の意識

授業の最後に奥本先生が受講生に見せたのは、CoSTEP申し込み時の課題文で我々が使用した言葉のネットワーク図。「理解」「研究」「専門」「知識」「分野」「伝える」、無意識にPUSのような「伝える」に偏りがちかもしれません。何を目的としてどのような人々に伝えたいのか、対象者に働きかけるにはどのような伝え方が良いのか、「まずは相手を知ってみよう」と思いました。

奥本先生、ありがとうございました。