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勇気をもって挑んだ海外からのCoSTEP受講

2019.3.31

私は韓国人です。韓国の工科大学で職員として働きながらCoSTEPの選科Aを受講しました。正直、最初は言語の問題で心配もありました。日本語で行われる講義をうまく理解でき追いつけるのか、3日間の集中演習で同じ班の皆さんに迷惑をかけるのではないか、など。でも今は、そんな悩みに負けずCoSTEP受講を決心した過去の私を、精一杯褒めてあげたい気分です。CoSTEPでは韓国はおろか、世界で唯一の大切な経験ができたと思っているからです。

 

私は「科学関連の仕事がしたい、でも研究は合わないかもしれない」と迷う中で「科学コミュニケーター」を目指すことになりました。でも韓国では、著名な科学者が一般人向けの本を書いたり、講演をしたり、番組に出たりするのがようやく「科学コミュニケーション」だと認識され始めたところでした。当然、科学コミュニケーターになるためのプログラムや学位課程はほとんどいない状況で、その少ない教育の機会も、都市から離れた地方に住んでいる私には手が届きませんでした。そして私は「科学を分かりやすく教える」ことだけではなく、科学と社会の間で起きる多様な科学コミュニケーションに興味があったこともあり、なおさら学べるところを探すのは大変でした。

 

そんなある日、日本科学未来館のインターンシップで知りあった科学コミュニケーターの方(CoSTEP修了生)からCoSTEPを推薦されました。調べてみるとCoSTEPは今まで13期(現在では14期)の修了生が出た、歴史ある10か月間の科学コミュニケーター養成課程でした。そして幸い遠隔受講ができる「選科」があり、もしかしたら海外からの受講もできるかもしれない、と考えました。念願の科学コミュニケーター養成課程を、私が今住んでいるところからでも受講できる機会はそうそう無いと思い、「これは挑戦すべきだ!」と急いで申し込みました。

 

今思えば「選科A」を選んだのは日本語に完全に慣れてはいない私にピッタリでした。まずe-learningで受講するため、講義の映像を繰り返して観たり、時々一時停止してゆっくり理解することができてとても助かりました。そして集中演習でサイエンスイベントを企画する時は、同じ班の皆さんのサポートのおかげで私もちゃんと役割を果たすことができました。私の出身もイベント内で活かすことができ、とても嬉しかったです。

 

肝心のCoSTEPでの学びは私の予想や期待をはるかに超える宝物となりました。7つのモジュール、27の講義から私が欲しかった「多様な科学コミュニケーション」の姿をその現場の専門家から直接聞くことが出来ました。もっと感心したのはその内容をちゃんと噛み砕き、自分のものにするための色々な「学び方」も一緒に学べたことです。そして集中演習では何より「人」から無形の学びをたくさん得られました。CoSTEPのスタッフの先生たちはグループワークとイベント企画のノウハウを自ら見せてくれました。仲間でもある受講生の情熱と真剣さ、多様な背景から生まれる個性と斬新なアイディアにたくさんの教えをもらいました。そして私は「人」からの学びに感心したあまり、必須要件ではなかった修了式にも札幌に向かい、出席しました。

 

私はCoSTEP受講を通じて「私のこれからの科学技術コミュニケーション」についてもっと具体的なイメージを持つことができるようになりました。そしてCoSTEPの学びを韓国の人々に紹介するブログも開設しようと考えています。しかし、それは私を通した学びの一部に過ぎないので、もしこの体験記が読める、日本語のできる方ならCoSTEPの受講を強くお勧めします。あなたもこんな貴重な体験ができますように。

姜知佑(選科A)

大学職員