私たちは日々、誰かと対話をしています。その中で、もっと違う対話ができたのではないかと考えることはありませんか?
今回のCoSTEPの修了記念シンポジウムでは、自らの家族の姿を20年にわたって撮影したドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』の藤野知明監督と、精神医学の専門家で、引きこもり問題などを研究されてきた斎藤環さんをお招きし、対話とケア、創造をめぐる話をつむぎます。
統合失調症の症状が現れた姉と、彼女を支えながらもすれ違い続けた家族を記録した『どうすればよかったか?』は、2024年12月の公開後、大きな注目を集め、全国各地で上映されています。カメラを通して家族との対話を重ねる姿は、観る人それぞれの経験や思いと重なり、深い共感を呼んでいます。上映後に「自分ならどうしただろう?」と問い続けた観客も多かったのではないでしょうか。
斎藤環さんもその問いを深く考えた一人です。SNSにも「お姉さんと「対話」してみたかった」「すれ違い続ける対話に家族みんなを巻き込みたかった」と感想を投稿するなど、本作のテーマに強く共鳴しました。
斎藤さんは、精神医療の現場で「開かれた対話」を意味するオープンダイアローグに取り組んできました。これは、フィンランドで生まれた対話のアプローチで、専門家と当事者が対話を重ねることで、答えのない問いに向き合い続ける力を育むものです。
本作を観た皆さんの中にも、「どうすればよかったかわからない」と感じた方がいるかもしれません。ただ、わからなくても対話を続ける力や勇気、答えのない問いに向き合い続ける姿勢が、今の社会を生きるうえで大切なのではないでしょうか。藤野監督と斎藤さんの対話を通して、対話が生み出す関係の変化、ケアの可能性、そして対話を続けることが生み出す「創造」について考えます。
科学技術コミュニケーションにおいても重要なポイントになる「対話」。その深いところにある難しさと責任、希望と可能性について、一緒に考えてみましょう。
【日時】 2025年3月8日(土) 13:00-15:00(開場/受付12:30)
【場所】北海道大学 工学部 フロンティア応用科学研究棟
2F レクチャーホール(鈴木章ホール)
【開催形式】対面開催(オンライン配信なし)
【主催】北海道大学 CoSTEP
【協力】北海道大学Ph.Discover、ダイバーシティ・インクルージョン推進本部、
シアターキノ
【参加費】 無料(要申し込み、先着100名)
*空きがある場合は当日券を発行します(先着順)
*空き状況は前日までにCoSTEPのウェブサイトとSNS(facebook, X, instagram)から告知します。
◉ 映画は事前に観てから参加されることをおすすめします。全国の上映情報はこちらをご確認ください。
◉ 本シンポジウムでは、医療に関するご相談などは受付しません。ご了承ください。
ゲスト
藤野知明さん
『どうすればよかったか?』監督。1966年札幌市生まれ。北海道大学農学部卒業。住宅メーカー勤務後、95年日本映画学校映像科録音コース入学。千葉茂樹監督に出会い、ロシア・サハリンの先住民ウィルタ、ニブフに関するドキュメンタリー映画『サハリンからの声』(96年)の制作に参加。作品に『八十五年ぶりの帰還 アイヌ遺骨 杵臼コタンへ』(2017年)など。現在、『アイヌ先住権とは何か?』のほか、ウィルタに関するドキュメンタリー映画を制作中。
斎藤環さん
医療法人八月会 つくばダイアローグハウス院長。1961年、岩手県生まれ。精神科医。筑波大学医学研究科博士課程修了。爽風会佐々木病院等を経て、筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、「ひきこもり」の治療・支援ならびに啓蒙活動。著書に『社会的ひきこもり』、『中高年ひきこもり』、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川財団学芸賞)、『オープンダイアローグとは何か』、『「社会的うつ病」の治し方』、『イルカと否定神学』ほか多数。
司会/進行
朴炫貞
CoSTEP 特任講師、アーティスト
本シンポジウムは、CoSTEPでの1年の学びを振り返る修了特別プログラムとして開催します。
当日、シンポジウムの前後にも様々なセッションをご用意していますので、あわせてご参加いただけると幸いです。
09:00~10:00 ポスターセッション①(一般公開)
10:00~11:40 成果発表会(一般公開)
12:00~13:00 ポスターセッション②(一般公開)
13:00~15:10 修了記念シンポジウム(一般公開)
15:30~17:00 修了証授与式(受講生限定)
17:00~17:30 ポスターセッション③(受講生限定)