実践+発信

「科学祭と『つなぐ人』実際」(12/2)金森晶作先生講義レポート

2018.1.19

櫻井弘道(2017年度 本科/学生)

今回の講義は、公立はこだて未来大学の研究員で、はこだて国際科学祭のコーディネーターをされている金森晶作先生をお招きしました。金森先生には、はこだて国際科学祭の裏側についてお話していただき、そこから先生が考える、人とのつながりを築く上で重要なことを教えていただきました。

はこだて国際科学祭について

はこだて国際科学祭は、函館市や函館の教育機関、研究機関などの連携組織である「サイエンス・サポート函館」が主催しており、2009年から年に一度、8月下旬の9日間に開催されています。その内容は、函館の話題や課題を扱った体験型のイベントやサイエンスショー、函館にいる専門家を呼んでのトークイベントなど様々な企画が行われています。年齢を問わず、すべての人を対象としており、夏休み中の子どもが参加できるように、7月中旬からプレイベントも開催されています。

金森先生の考えとして、国の科学技術政策のような大きな枠組みで科学を伝えるよりも、自分の住んでいる街に結び付けて科学を伝えた方が、自分事として考えやすく、伝わりやすいという思いがありました。そのため、科学祭の企画内容も函館に関することを題材としており、ゲストとして呼ぶ専門家や出展者、発表者も函館に何らかのつながりを持っている人を呼んでいます。また、科学祭のテーマは、「環境」、「食」、「健康」の三つを年替わりで行っており、これも自分事として考えやすいテーマが選ばれています。

はこだて国際科学祭に見られる人をつなぐコツ

科学祭が単なるイベントの集合体とならないように、スタッフや出展者による交流会や報告会が行われており、そこでは企画に関する意見交換や情報共有などが行われています。また、「科学楽しみ隊」という市民有志のボランティアグループがあり、科学祭のスタッフとして活動し、企画を立てる時にも関わっているそうです。このように、はこだて国際科学祭では、イベントの担い手によるコミュニティが出来ています。これによって何か科学技術に関する問題が出てきたときに、相談できる専門家や話し合える仲間とのつながりを持つことができ、社会がうまく科学技術と付き合っていくことにつながっていきます。

このように、はこだて国際科学祭では、イベントの担い手とのつながりを大事にしており、そのようなつながりを作る上で金森先生が大事にしていることを最後に教えていただきました。それは、事前に相手の立場は完璧に理解する必要はなく、それを相手と話し合いながら理解していくことが大事だということです。先生が連携相手と企画を作っていくとき、事前に連携相手の立場を考慮してストーリーを考えていきます。連携相手にはその組織が背負っているプロジェクトがあり、また組織の性質によって、意思決定のスピードなどが異なります。これらのことを考慮することはもちろん大事ですが、それらを考慮して相手が面白がってもらえる企画を提案しても、それが却下されてしまうことはよくあるそうです。ただ、その時に相手が何をしたいのかを聞き出し、話し合いながら企画を作っていくことが大事です。また、こうして話し合いを重ねていく中で、相手との関係性も作っていくことも重要だとおっしゃっていました。

講義を受けて、私が一番衝撃を受けたのは、サイエンス・サポート函館の活動方針が七年目にしてできたということでした。方針がないと、自分たちがどこに向かって活動していくのかわからなくなりそうですが、活動方針をはじめに決めてしまうと誰かを排除してしまうことになってしまうという事を聞いて、納得しました。多くの人が科学祭に面白がって参加できるように、時には決まりをあえてゆるく設定しておくことも必要であると学びました。

金森先生、ありがとうございました。ぜひ一度、はこだて国際科学祭に行ってみたいと思います。