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情報デザインからフューチャーデザイン対話と共創の技術の可能性と限界

2010.7.20

7月14日、渡辺保史CoSTEP客員准教授から、「情報デザインからフューチャーデザインへ」と題して講義がありました。

そもそも情報デザインとは、何なのでしょうか。聞き慣れた言葉なのに、二つを組み合わせると、新鮮な響きです。渡辺先生によると、「五感で感じられるものすべてを分かりやすく、親しみやすく、デザインすること」だそうです。しかし、これだけでは分かりにくいので、様々な事例で説明してくださいました。

講義の冒頭では、「Powers of Ten」という、1968年アメリカ制作の科学映画が紹介されました。10秒ごとに10のN乗倍にしていくという手法で、ピクニックする男女から銀河系の果てまで連続的に拡大して見せます。同様に縮小していくことで、銀河系から男性の皮膚の中、果ては素粒子までたどり着き、わずか8分間で世界の全容を描きます。

他にも地球を視覚•触覚で示す立体展示物「触れる地球」や、株式市況をビジュアルに表現する地図なども情報デザインとして紹介されました。複雑なことを分かりやすく表現できる漫画も、情報デザインの一種としてとらえられるそうです。

海外の研究者が定義する情報デザインを述べられた後に、渡辺先生ならではの切り口で、「what、how、why」の3つのキーワードを軸に、情報デザインという領域をさらに掘り下げていきました。

アートと違って、デザインは相手があって初めて成り立ちます。相手の視点に基づき、相手の立場に立った上で、デザインを道具として使うのが、情報デザインです。そのため、情報の発信者としても受信者としても、日常生活でのものの見方、捉え方が重要だという示唆がありました。

また情報デザインは、異なるコミュニティとの接続を可能にし、人との関係性をよりよい形にするツールにもなり得ます。人々の対話や、共創の場であるコミュニティ。それと向きあうのが情報デザインです。

これからインターネットを中心に「創って育てる文化」が本格的に幕を開けます。こうした文化をコミュニティとして共有していくにも、情報デザインは有効なツールなのです。

最後に、十年後の情報デザインのあり方に触れられました。日本はこれから右上がりの発展は望めず、社会の縮小と向き合わなければならない。だが、コミュニティの規模の縮小とともに、人との「つながり」の価値が増してくるはずです。そんな時代には、コミュニケーターの存在意義もますます高まっていくのではないかと、私も思いました。

講義後には「情報を分かりやすくデザインし過ぎるのは、危険な側面もあるのでは?」といった質問が出されますが、渡辺先生は、逆に受講生への質問として投げ返されました。「他人事>自分事」のあいだに切り離せない領域があり、それを「自分たち事」ととしてとらえるべきというお話もありました。

渡辺先生からの問いかけは、受講生自身がこれから科学技術コミュニケーションを実践していく中で、常に意識し続けなけれなばならない、大きな課題だと感じました。

(選科・松浦かんな)