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チラシデザイン:119サイエンスカフェ札幌「心って何だろう?ヒヨコ行動から考える〜」

2022.3.9

2021年9月25日に開催された、第119回サイエンス・カフェ札幌「心って何だろう?〜ヒヨコの行動から考える〜」のチラシデザイン報告レポートです。チラシデザインに挑んだのは、本科・グラフィックデザイン実習を受講している浅嶋詩乃さんと中村千夏さんです。

制作者:浅嶋詩乃(2021年度 本科/国際食資源学院修士1年)・中村千夏(2021年度 本科/社会人)
制作年月:2021年7月〜9月

2021年9月25日に開催された、対話の場の創造実習班(以下、対話班)主催の第119回サイエンス・カフェ札幌「心って何だろう?〜ヒヨコの行動から考える〜」。
このヒヨコチラシは、17期本科グラフィックデザイン実習受講生の浅嶋と中村で担当しました。Illustratorの使い方を学ぶところから、仕上げの段階で「なんか物足りない?」状態を抜け出すまでの全記録をお届けします!

作業スタート!

2021年の8月上旬に、対話班とグラフィックデザイン班(以下、グラ班)の初回ミーティングが行われました。対話班からは、サイエンスカフェのテーマとこのイベントで伝えたいことを大まかに共有してもらいました。
対話班がチラシに求めるものとして、以下の要望をいただきました。

  • ヒヨコの姿を入れて欲しい
  • 考える余白を残すデザインにしたい
  • 雰囲気は「シンプル」「スタイリッシュ」な感じ
  • イベントには、義務教育を終えている人で、ひよこ・心・動物行動学・北大に興味がある人に来て欲しい
  • ヒヨコの写真を使った方が実験動物感があって良いかもしれない
  • 今回のイベントのゲストの松島先生は文学的な雰囲気がある人

これらの情報をもとに、まずは松島先生の研究について勉強し、そこからいくつかラフ案を作成することにしました。松島先生の研究を調べてみて、

  • ヒヨコの心は目には見えないけれど、行動を調べることによってその心を見ることができるかもしれない
  • 生産者であり略奪者であるというヒヨコの社会性

が大切なポイントになるのではないかと考えました。

ZoomでのMTGの様子
初めてのIllustrator〜感動の初対面〜

ラフ案を作成する上で、私たちの前に現れた大きな壁はIllustratorでした。
浅嶋と中村はIllustrator初心者だったため、Illustratorを使いこなすのに大苦戦。。また、コロナの状況下でなかなか対面で作業することができなかったため、個人作業を行なった後にzoomで池田先生にアドバイスをもらうという形で作業を進めていました。しかし、なかなか一人ではアイデアとIllustratorの使い方に限界が。。そんな個人作業が行き詰まってきたころ、ついに対面で作業できるチャンスが訪れます!
2021年の5月からずっとzoomで実習を行なってきたグラ班は、2021年8月14日に念願の初対面(一部)を果たしました!とっても嬉しかった〜〜〜〜

チラシ班が対面しての制作作業

やっぱり会って話した方が作業の進みが早いですね!Illustratorの使い方を気軽に聞けて、ラフ案についても自分では気付けなかった視点や考え方を知ることができて、とても楽しかったです!
特に私が感動したのはIllustratorのレイヤー機能です!複数のレイヤーを作成することで、あるオブジェクトを移動させたいときに別のオブジェクトをロックできたり、オブジェクトの順番を簡単に変えることができたり、Illustratorがめちゃくちゃ使いやすくなりました!それまで全てのオブジェクトを一つのレイヤーにしていたなんて、今となってはとても恐ろしいです。。

また、対話班との初回ミーティングで、

  • ヒヨコの写真を入れて欲しい
  • 「シンプル」「スタイリッシュ」な雰囲気が良い

という2点の要望がありましたが、グラ班で話し合う中で、「目に見えない心を表す上で、写真のヒヨコのリアリティさが適当ではないかも?」「私たちの考えるシンプル・スタイリッシュと、対話班の考えるシンプル・スタイリッシュは合っているのか?」という疑問が湧いてきました。
そこで、ヒヨコの写真バージョンとイラストバージョンの両方を用意し、加えて、いろんな雰囲気のイメージを作成することで、対話班の考えているイメージをより明確にすることを次回の打ち合わせの目標にしました。

ラフ案の作成&対話班との打ち合わせ

勉強会やグラ班での話し合いを踏まえ、浅嶋&中村で合計8案を考えました。
その中の一部をご紹介します。

A案
B案

A案「ヒヨコの心」では、松島先生の鏡を用いた実験を参考にして、鏡の向こうのヒヨコには心があるようなイラストを描きました。鏡は他者を表すモチーフとして使い、相手という存在によって、ヒヨコの心はあるのかどうかを考えることができるようなデザインを作成しました。ヒヨコの何か考えていそうで何も考えていないような表情がお気に入りです。

B案「生産者と略奪者」では、二匹のヒヨコで社会採餌の生産者ー略奪者ゲームを、黄色の円で最適餌パッチモデルを表現しています。ヒヨコの社会性や、競争やリスクから心が生まれるのではないかということを暗示しています。ヒヨコの足が長くなっているのは、「人間がヒヨコに共感できる部分がある」というカフェの説明文から、少し人間味を持ったヒヨコを表現して、このチラシを見た人が引っかかりを持てるようなデザインにしました。

F案
H案
I案

F案:目には見えないひよこの「心」を、松島先生はひよこの行動で明らかにしようとしている。そのひよこの行動を「最適パッチ利用のモデル」の円を歩き回るひよこの足跡で表現しようと試みた案です。ポップな印象にはなってしまう。

H案:鏡を使った実験から、ひよこは鏡に映る自分に何を感じているのか、松島先生の研究資料にも使われていた一見無表情なひよこのイラストを使って、見る人がどのような感情かを考えてしまうような作品を目指しました。松島先生が持つ研究だけに留まらない知的な世界の雰囲気をだすため、物語にでてきそうな豪華な装飾がある鏡を描きました。

I案:対話班の要望に添うように、H案の鏡をよりシンプルにスタイリッシュにした案です。

以上のような案を対話班に提案したところ、

  • 写真よりもイラストの方が良さそう
  • 松島先生がどんな内容のことを話すのか本番までわからないので、実験の詳しい内容はなるべく盛り込まない方が良いかも
  • 目に見えない心を物語ることを伝えるデザインが良い
  • A案について、ヒヨコの心の位置が正しくないので、誤解を招いてしまうかも

というフィードバックをいただきました。
言葉では表現しきれない対話班が抱くサイエンスカフェのイメージを、実際にアイデアを見える形で提示し対話することで、新しい気づきとチラシ制作の方向性を捉えることができました。
これを踏まえて、対話班が気に入ったA案を中心にA,B, F, H, I案をブラッシュアップして「目に見えない心」を表現するチラシを作成することになりました。

ラフ案のブラッシュアップ&対話班との打ち合わせ

次の対話班とのミーティングまでにチラシ案を収束させるために、浅嶋と中村それぞれの推し案を作り、その案を重点的にブラッシュアップしていくことにしました。
浅嶋の推し案はA案「ヒヨコの心」です。イラストと情報の配置を工夫する方向でブラッシュアップを進めていきました。チラシに載せなければいけない情報が多かったため、見やすい配置を考えるのに苦戦しました。また、「ヒヨコの心の位置が正しくない」という対話班からの指摘を受けて、心(ハート)の位置を決め直すことにしました。しかし、ヒヨコの頭や二匹の間にハートを置いてみると、恋心を表しているように見えてしまい、結局元の位置がしっくりくると感じました。そこで、対話班には二匹のヒヨコの間にハートがあるバージョンと元の位置にハートがあるバージョンを用意して、どちらが良いか判断してもらうことにしました。さらに、ヒヨコのイラストだけでは何か物足りないのではないかと思い、タイトルからヒヨコのイラストまでを足跡で繋げたデザイン案を作成しました。

(A-1, A-2案の写真)

 

また、このA案以外にも、浅嶋は、「動物と動物の間に心がある」ことを表現したB’案、生産者と略奪者をヒヨコの駆けっこで表現したD’案、自分が餌を見つけたことが結果的に他のヒヨコの利益になることを「利他」と捉え、利他を料理という行為で表現したD’’案、「動物と動物の間に心がある」をトランプで表現しようとしてあまりうまくいかなかったD’’’案を考えました。

第一回目のミーティングで提示したF案については、ポップな印象があったので、背景色の黄色を白に変更、サークルの数を減らしスッキリさせてみました。
中村推し案のI案、そしてG案については、大きな変更はなくフォントを変えて提示しました。フォントを変えるだけで、チラシの雰囲気が変わり、ぐっとそのチラシがもつ表情のような世界観が表現できることを作りながら学びました。
以上の11案(収束してない。。)を対話班に見せたところ、イベントターゲット層にちょうどよくイベント意図が伝わり、だけど疑問が残るようなバランスのデザインが良いということで、最終的にはA-1案に決定しました。

ブラッシュアップ〜余白恐怖症との戦い〜

A-1案について、私(浅嶋)はずっと「このチラシは何か物足りないのではないか?」という気持ちを抱えていました。ブラッシュアップするにあたり、この「物足りなさ」を払拭することが必要だと考えました。私は「物足りなさ」=余白だと考えていたため、とにかく余白を埋めたい気持ちでいっぱいでした。しかし、余白を埋めてもこれじゃない感が拭えず、またしても行き詰まりを感じ始めます。この余白恐怖症について、グラ班の皆さんに相談すると、「余白は悪いことじゃない」との答えが、、!物足りなさの解決方法をぐるぐる考えていたところ、千夏さんから「背景の色を変えてみたら?」というアドバイスをくれました。試しに背景の色を変えてみると、なんということでしょう、、!物足りなさがなくなり、収まりの良さが出ました!こうして、背景の色を温かみと落ち着きのあるグレーに決定しました。
また、足跡は3本の直線を組み合わせて作っていたのですが、実際にチラシを印刷してみると無機質な感じが出てしまい、足跡を十分に表すことができていませんでした。そこで、手書き風の線を3本組み合わせて足跡を作成し、温度感のある足跡にしました。

他にも松島先生の写真の色の調整など、様々な微調整を行い、9月11日についにチラシが完成しました!
初回のミーティングからチラシの完成まで約1ヵ月間かかりました。動物の心についてひたすら考え、対話班もどんなイベントになるかわからないという、お互いに手探りな状態の中でイメージをすり合わせながら試行錯誤を繰り返した1ヵ月間。出来上がりをみたときと対話班の方から感想をいただいたときの嬉しさはひとしおでした。

Facebookバナー作成

コロナ禍でのサイエンスカフェは、オンラインでの開催。広報活動もチラシを配布用に印刷するのではなく、FacebookやWEBサイトなどでのオンラインでの告知がメインになりました。そのため、今回のイベントについて参加者の認識が統一されるように、チラシのひよこイラストやイメージをフル活用して、FacebookバナーやWEBサイト用のバナー、そしてイベント当日のZOOM背景などに展開しました。対話班の皆さんがサイエンスカフェ当日はもちろんのこと、その他の場面でもひよこイラストをZOOMで使って愛でてくれているのを見ては、苦労して生み出したグラ班はとても嬉しく感じていました。

チラシ作成を通して学んだこと

”余白は物足りなさじゃない”
なんかしっくりこない、物足りないと感じる原因をずっと余白が多いせいだと思っていましたが、文字の配置を少し変えるだけでもチラシ全体の見え方が大きく変わることは大きな学びになりました。また、背景の色を変えるだけでも雰囲気がガラッと変わって、余白のせいだけにするのはもうやめようと誓いました。今回のチラシ作成を通して、デザインの一つ一つの要素が大きな意味を持っていることを痛感し、街中のチラシやポスターの一つ一つのパーツをみるのが楽しくなりました。日常にいろんな面白いヒントが眠っていることに気づけたチラシ作成になりました。

2021年度グラフィックデザイン実習。チラシを囲んでの記念撮影