CoSTEPは、科学技術コミュニケーターの養成機関です。私がCoSTEPを受講した一番の理由は、科学技術コミュニケーターとして、科学技術の意義を市民に伝える役割を担うことで、研究者が最大限研究に打ち込める環境作りに貢献できるのではないか。そう考えたからでした。
CoSTEP本科の4つの実習の内、私はソーシャルデザイン実習配属となりました。この実習では、アートを通して社会起点で、社会と科学技術のあり方を考えます。今年度は、まず初めに最先端技術の過去を探るタイムライン制作、北海道の森について専門家に問う映像制作、アートを軸に高校生と廃棄物問題を考えたワークショップを行い、科学技術コミュニケーションの基礎を実践形式で学びました。
その後は受講生が主体となり、未来の日常を起点に価値観の再考を促す作品展示を行いました。2ヶ月かけて策定した計画を突然覆し、展示開始が残り1ヶ月まで迫った時は大変焦りました。しかし、先生方のご助言をいただきながら、夜遅くまで受講生同士必死になって計画・準備を行った期間は、CoSTEPでの一番の思い出となりました。
アート?普段美術館に行く訳でもないし、センスもない…もしかしたらそう考えられた方もいらっしゃるかもしれません。かく言う私もそうでした。しかしご安心ください。受講期間中は、講義・演習で基礎を学ぶことができる上に、実践の場でもアートに精通した先生方の手厚いサポートを受けられます。優れたアイデアと情熱さえあれば、それを実現する環境は十分に整っています。
それにCoSTEPには、バックグラウンドこそ異なれど、同じ志を持つ仲間が参画しています。多少苦手なことがあっても、それを得意とする誰かが補ってくれる。そういったチームならではの活動が行えることも、魅力の一つだと考えています。
最後に。CoSTEPの1年間は、新たな学びの連続でした。それは科学技術コミュニケーションの範疇に留まりません。対人関係における信頼の重要性や、泥臭い努力を続ける覚悟といった、人としてのあり方についても、学ばせていただきました。そして、ビジネスパーソンとしてキャリアをスタートさせる自分が、いかにして研究者を支え、社会の変革に貢献できるか。その一つの解をいただけたように感じています。
CoSTEPを受講するきっかけは各々異なります。同様に、1年間で得られる学びも、科学技術コミュニケーションの定義も、コミュニケーターとしての在り方も、決して定型的なものではなく多種多様です。もし受講を考えられている方がいらっしゃるならば、1年間たっぷり時間を使って、自分だけの学びの創造に挑戦してみてください。
大平朱莉(2021年度本科:ソーシャルデザイン実習)
北海道大学 文学部 行動科学研究室4年